ニシムタ本社が入るニシムタ与次郎店=5日、鹿児島市与次郎1丁目
納入業者に不当な協賛金を求めたなどとして、公正取引委員会は5日、独占禁止法違反(優越的地位の乱用)の疑いで、鹿児島県を中心にホームセンターを展開するニシムタ(鹿児島市、西牟田敏明社長)に立ち入り検査したことを発表した。公取委は、法令違反を認定しない「確約手続き」を適用、納入業者50社に計約7億3000万円を返金するなどの改善策を盛り込んだニシムタの「確約計画」を同日付で認定した。
公取委によると、違反認定はしないため、排除措置命令や課徴金納付命令といった処分は課さない。確約手続きによる業者への返金は全国6例目。アマゾンジャパン(東京)の20億円、ダイコク(大阪市)の7億5000万円に続く返金額となった。
ニシムタは「個別取材には応じない。見解はホームページに掲載した」としている。
公取委によると、ニシムタは納入業者に対し用途や算出根拠を示さず、「商品管理費」、「開店広告協賛」、「物流支援費」の名目で、仕入れ額の0.1〜2%を徴収していた。新規開店や店舗改装時に、商品搬入や陳列作業への人員派遣を納入業者へ依頼した際、必要な費用も一部支払っていなかった。
ニシムタは、協賛金などは納入業者と契約を交わしており、人員派遣についても費用を請求するよう求めていたものの、公取委は業者は取引を続けるため、要求を拒めなかった可能性があるとみて、いずれも優越的地位の乱用として問題になり得ると判断。4月にニシムタ本社へ立ち入り検査し調査した。
公取委は今回、迅速に是正でき、業者に返金される確約手続きを採用。不当要求は遅くとも2022年3月ごろから始まったとみて、返金対象は約3年分とした。不当要求の総額は非公表。計画には、納入業者へ行為改善の通知、5年間の外部監査、公取委への報告なども盛り込まれた。調査開始から約5カ月での認定は最速としている。
ニシムタは1958年創業。鹿児島、宮崎、熊本3県でフランチャイズ含め計36店舗を展開し、食料品や生活雑貨、レジャー用品を販売する。2025年2月期の売上高は約877億円。07年には、納入業者に不当に商品を返品していたなどの独禁法違反で、排除措置命令の行政処分を受けている。
◇確約手続きとは 独禁法違反の疑いで調査を受けた事業者が、自主的な改善計画を公正取引委員会に提出し認定を受ける制度。行政処分の一つで、競争上の問題を早期に是正できる利点があり、2018年に導入された。違反が認定されないことから課徴金納付命令や排除措置命令は受けない。改善が不十分な場合、公取委が調査を再開できる。