床上浸水した家屋を消毒する作業員=3日、霧島市隼人
鹿児島県霧島、姶良両市を中心に県央地域を記録的大雨が襲ってから8日で1カ月。床上・床下浸水した住宅の復旧は徐々に進むものの、消毒作業や工事を待ち、仮住まいでしのぐ住民もいる。暮らしの再建は道半ばだ。
両市では、罹災(りさい)証明書を発行するため4日までに床上879件(霧島610、姶良269)、床下665件(霧島466、姶良199)の申請があった。
床上約20センチまで浸水した霧島市隼人の徳永カツヱさん(87)宅では3日、市の委託業者が室内を消毒した。
消毒作業は感染症を防ぐため、泥を除去して清掃後、完全に乾かないと始められない。木造2階建てに1人で暮らす徳永さんは、家族や友人の協力で畳を外し、業者に頼んで泥を取り除いた。床が乾くまでに3週間以上。高齢のため2階には上がれず、ベッドや椅子で過ごした。作業が終わり「ようやくゆっくり寝られる。片付けも進むし、ありがたい」と安堵(あんど)していた。
4日までに両市に寄せられた消毒作業の申し込みは862件(霧島620、姶良242)。うち676件(霧島514、姶良162)は作業を終えた。
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姶良市平松の泉清隆さん(52)は、母親(80)と住む自宅前の狩川が氾濫し、床上60センチ余り浸水した。玄関前は陥没し、川との境にあるブロック塀や鉄柵は崩れたまま。「雨や台風の予報が出るたびに怖い」
自宅は半壊と認定され、玄関前の復旧は一定の補助金を受けられそうだが、着工の見通しは立たない。家周りのブロック塀などの修復には補助がなく経済的に苦しいという。「床板を張り替えたり、家財道具を買ったり、市役所に行ったり。毎日必死で考える余裕もなかった」。先の見えない日々に疲れ切った様子だ。
床上浸水の被災者などに市が無料提供する市営住宅には、4日現在、50世帯(霧島29、姶良21)が入居する。
床上浸水した姶良市下名の山口眞由美さん(38)は家族3人と17日間の避難所暮らしをへて、市営住宅に移った。その間、災害ボランティアの協力を受け自宅の土砂を運び出したが、築100年を超える木造平屋は「とても住める状況にない」という。
車は3台水没。疲労も重なり、家族3人は新型コロナウイルスに感染した。市営住宅にエアコンはなく、扇風機でしのぐ。「これからどうすればいいのか。まだ全然分からない」とマスク越しの表情は不安げだ。
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霧島市福山の槐島美文さん(67)宅は、近くの湊川が木の枝などでせき止められてあふれ、1メートル以上漬かった。車4台が水没し、水が引いて家に入ると一面に土砂が積もっていた。
一般社団法人オープンジャパン(宮城県)や市社協のボランティアが、家財道具の処分や土砂の除去を手伝った。「自分たちだけではできない。行政の手続きなどすることが多く、実績のあるボランティアの助言は助かった」と感謝する。
自宅は全壊と認定され、公費補助による解体が決まった。8月末、市が提供する教員住宅に入居。9月上旬には復職した。「家電や洋服、車など、多くの人が寄付してくれた。早く前に進みたい」と力を込めた。