退陣する意向を表明した石破茂首相の記者会見を視聴する市民ら=7日午後6時すぎ、鹿児島市のエディオン鹿児島山形屋店
石破茂首相が退陣の意向を表明した7日、地方創生を軸とした政策に期待していた鹿児島県内の有権者からは「道半ばで残念」と惜しむ声が上がった。判断のタイミングについては「参院選で負けた時点で辞めるべきだった」「関税交渉に取り組む中では難しかっただろう」などと評価は割れた。「石破降ろし」を巡る自民党内の動きに対しては「トップを代えれば済む問題ではない」と政治の停滞を懸念する意見もあった。
2024年10月に発足した石破政権は地方創生を看板政策に掲げ、高齢者が活動的に暮らせる拠点づくりなどを重視してきた。
補助金に頼らない地域づくりに取り組む鹿屋市串良の柳谷集落(通称やねだん)の豊重哲郎自治公民館長(84)は、当時地方創生担当相だった石破氏の視察を15年に受け入れて以来、何度もやりとりしてきた。地方創生に本気で取り組み、現場主義の発想を持つ政治家と評価していたという。
今回の退陣表明に「自民党内の争いで去るように見え『なんだこれは』という感じ。今後本格化するとみていた農政改革にとってもマイナス。こんな騒動を起こす自民党議員こそ改革する必要がある」と憤った。
鹿児島市の会社員竹之内智子さん(53)は、都市部と地方の格差に問題意識を持ち、国民一人一人へ目を向けた政策に共感していたと話す。「内輪もめに巻き込まれ、石破降ろしに耐えきれなかった印象。クリーンで着々と公務に取り組む姿勢に好感を持っており、政策にも期待していた。もう少し踏みとどまってほしかった」と声を落とした。
奄美市名瀬の自営業佐竹京子さん(83)は、安全保障や農業政策について「首相になって1年もたっていないからだろうが、石破さんらしさを最後まで感じられなかった。意志表示が曖昧で、メリハリがなかった印象」と振り返る。相次ぎ発覚した裏金問題を念頭に、「自民党は党首を代えればいいという問題ではない。政治不信の解消に努めてほしい」と要望する。
この時期での退陣判断に関しては賛否あった。霧島市福山で建設会社を経営する有村幸光さん(57)は、日米関税交渉や相次いだ災害対応に取り組む中で「選挙の責任をいつ取るか判断は難しかっただろう」とおもんぱかる。党内の分断が決定的になれば政治空白が生じるとして「やむを得ない一番のタイミングだったのでは」と理解を示した。
さつま町泊野のコメ農家宮田裕司さん(66)は「これまでの選挙結果を踏まえれば辞めるのは当然で、判断が遅かった」と指摘する。選挙時には、現金給付や消費税減税など各党さまざまな公約を打ち出していたが、変わった実感はない。
地方では人が減り続け、荒れ地は増える一方。鳥獣対策なども年々厳しさを増しているといい、地域それぞれの実情に応じた農業政策を求めている。今後の政治については「体制を一新し、実行力の伴った改革に期待したい」と話した。