ローカル線に未来はあるか…JR九州社長が「盲腸線」と例えた指宿―枕崎線、切られる前にできることを地元は模索

2025/09/15 06:45
本土最南端の終着駅・枕崎駅。週末や連休中は観光客でにぎわう=8月12日、枕崎市
本土最南端の終着駅・枕崎駅。週末や連休中は観光客でにぎわう=8月12日、枕崎市
 鹿児島をはじめ全国でローカル線の存続が危ぶまれている。JR各社は区間別の収支や利用状況を公表し、将来の地域交通の在り方を巡り、地元と対話したい姿勢を強調する。近年、自然災害を機に存廃論議に発展するケースも珍しくない。国鉄から引き継がれてきたレールはどうなるのか。鉄路の現状や歩みを振り返る。(連載かごしま地域交通 第4部「きしむレール」①より)

 「ローカル線が単なる地域の足としてだけでなく、まちづくりにも必要との共通認識を持てたのは非常に大きい」

 鹿児島県や沿線自治体、JR九州でつくる「指宿枕崎線の指宿-枕崎間の在り方に関する検討会議」が発足して8月でちょうど1年。有識者として参加する呉工業高専(広島県呉市)の神田佑亮教授はこれまでの活動を総括する。

 JR九州がこの区間を巡り協議を呼びかけたのは2023年11月。国が地方鉄道の存廃議論の目安を示して間もない頃だった。1キロ当たりの1日平均利用者数(輸送密度)が千人未満とされる中、指宿-枕崎の22年度は220人で、管内の千人未満の区間では3番目に低い数字だった。

 定例会見という公の場で、利用の少ない路線を名指しして対応を求めたのは初めて。国主導で存廃を議論する「再構築協議会」ではないとはいえ、関係者を驚かせた。

 古宮洋二社長は「建設的な議論が進められると考えた」と説明した。これまでともに利活用を進めてきた沿線の熱意を知っているのだろう。一方で「終点が他の路線と接続しない『盲腸線』だ」と指摘した。切りやすい状況であることも示唆した。

□■□

 検討会議は24年8月に任意の協議会として発足した。初会合で神田教授は「鉄道を活用して地域が稼ぎ、結果として足も確保するという視点があってもいい」と助言。存廃や運営の在り方を話し合うのではなく、まずは鉄道を生かした地域づくりを追求する方向性で一致した。

 沿線の魅力を探るワークショップを開催。地元の商工関係者に加え、将来の担い手となる高校生も対象にした。25年度は観光客や駅周辺のにぎわいなど、鉄路が沿線にもたらす経済効果を可視化する調査に着手した。今後は具体的に稼げる活用策を実施・検証し、年度末までに活動指針をまとめる予定だ。

 「自治体はローカル線に対する問題意識はずっと持っている。責任を押し付けられるのを懸念し踏み込めずにいた」と神田教授。この1年のやり取りを通し、前向きに対処してきたと評価する。その上で「最終的に鉄道の存続を選ぶなら、誰がどう負担するのかという議論は避けて通れない」と覚悟を促す。

□■□

 一連の動きをどう見るか。社内に鉄道部門を設け、沿線活性化に取り組む中原水産(枕崎市)の中原晋司社長は「地域の将来に関わる話だ」と当事者意識を鮮明にする。

 10年ほど前から沿線の観光関係者らと観光・イベント列車を走らせ、枕崎駅舎を使った各種イベントもしてきた。本業に鉄道を絡めれば、テレビや新聞での広告効果も高いと肌身で感じているという。

 「沿線には8万人余りの人口と産業が集積しており、鉄道を活用する力は残っている」と中原社長はみる。JR最南端の終着駅・枕崎駅や開聞岳をはじめ唯一無二の存在も心強い。「公共交通を維持していくためには、市民や民間がその価値を理解し支える機運を広げなければいけない。そのためにも鉄道で稼げるという実績を重ねていく」と決意を示した。

鹿児島のニュース(最新15件) >

日間ランキング >