再開発中のJR鹿児島中央駅西口周辺。JR九州が手がける分譲マンションの工事が進む=8月22日、鹿児島市
鹿児島をはじめ全国でローカル線の存続が危ぶまれている。JR各社は区間別の収支や利用状況を公表し、将来の地域交通の在り方を巡り、地元と対話したい姿勢を強調する。近年、自然災害を機に存廃論議に発展するケースも珍しくない。国鉄から引き継がれてきたレールはどうなるのか。鉄路の現状や歩みを振り返る。(連載かごしま地域交通 第4部「きしむレール」⑤より)
鹿児島の陸の玄関口であるJR鹿児島中央駅(鹿児島市)。西口には2023年、複合商業ビルが開業し、隣接地では再開発が進む。仮囲いを見ると、JR九州の分譲マンション「MJR」の文字がひときわ目立っていた。
鉄道事業が祖業ながら稼ぎ頭は不動産事業だ。25年3月期連結決算によると、運輸サービス部門は121億円の営業黒字。不動産は246億円と2倍の利益を計上した。売上高に当たる営業収入(4543億円)の内訳は、不動産のほか、ホテルや流通などの「非鉄道」が3分の2を占め、他のJRより割合が高い。
1987(昭和62)年4月の発足以来、「できることは何でもやってきた」と中堅以上の社員は口をそろえる。
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分割・民営化された当時、国鉄の長期債務は37.1兆円。3大都市圏の東、東海、西のJR3社を中心に一部を引き継ぎ、残る25.5兆円は国鉄清算事業団が土地や保有株の売却で処理するとした。
九州、四国、北海道の「三島会社」は厳しい経営が見込まれたため債務は負わず、国から1.3兆円の持参金「経営安定基金」を渡された。JR九州分は3877億円。ただ基金の運用益で鉄道の赤字を補うという見通しは、バブル崩壊や低金利時代で外れる。「ダボハゼ経営」と皮肉られながら鉄道以外の分野を開拓。九州新幹線開業を起爆剤に経営基盤を固めてきた。
2016年度の株式上場による完全民営化を目指す中、基金の扱いが焦点となった。JR九州は基金を保有したまま上場を進めようとしたが、公平性を欠くとして認められなかった。政府内では国庫返納を求める声も出た。
国交省は基金を債務返済に充てるのが適正と判断。ローカル線維持や利便性確保のためには財務体質の強化が欠かせないとし、JR会社法改正で基金の取り崩しを認めた。債務返済が進めば市場の評価も高まるとの期待もあった。
取り崩した基金は、九州新幹線の線路などを保有する鉄道建設・運輸施設整備支援機構に、開業から30年間払うことになっている使用料の一括払い(2205億円)や、鉄道関連の投資(872億円)に充てることになった。
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16年10月の上場後、JR九州はコスト削減の動きを強める。各地でワンマン運転や駅の無人化を拡大。「ローカル線の在り方に関する議論の推進に注力する」(25~27年度の中期経営計画)の文言通り、指宿枕崎線や日南線の末端区間について、沿線自治体と議論を進めている。
「JR発足時から利用客が7、8割減っている区間もある。大量輸送機関としての鉄道の特性が生かせているのか」。古宮洋二社長は会見で度々疑問を呈す。「いつか乗る、誰か乗るではローカル線はなくなる。地元は『マイレール意識』を持ってほしい」
国鉄清算事業団が処理を担った24兆円余りの債務は1998年に国が引き継ぎ、直近の残高は15兆円ほど。「レールを残していくため」と返済し続けている。
=おわり=