あなたにはいい香りでも、私には頭痛のタネ…学校の「香害」深刻 子どもの1割が体調不良を経験、不登校になるケースも

2025/10/14 11:50
(イメージ)
(イメージ)
 柔軟剤や香水など人工的な香りによって、頭痛や吐き気を生じる「香害」。日本臨床環境医学会などが2024年度に実施した調査では、9都道県の小中学生約8000人のうち10.1%が香りによる体調不良を経験していた。鹿児島県内でも香りで体調を崩し、不登校になった子どもがいる。だが香害の認知度は低く、専門家は教育現場などでの早急な対策や理解を求めている。

 「学校が臭い」。県内の中学1年の男子生徒は、小学校に入学してまもなく、母親に打ち明けた。周りの児童の柔軟剤の香りが強く、頭痛や足のしびれを感じるようになった。窓を閉め切る時は特につらく、微熱が出て寝込むこともあったという。

 母親は学校側に相談し、給食当番では柔軟剤の香りが残る共用の給食着を使わずにエプロンを持参させたり、保護者向けに香害を啓発してもらったりした。

 しかし児童の体調不良は続き、5年生から不登校になった。母親は「柔軟剤の使用はせめて容量を守って。臭いで苦しむ人がいることを知ってほしい」と訴える。

 香害は、香料や消毒液に含まれる化学物質に起因する化学物質過敏症の一種。めまいや吐き気、倦怠(けんたい)感、腹痛などの症状があり、個人差が大きい。発症のメカニズムは未解明な部分が多く、子どもも大人も発症する。

 日本臨床環境医学会と室内環境学会は24年度に調査を実施。回答した9都道県の小中学生約8000人と未就学児約2000人のうち、8.3%が臭いが原因で体調不良になったとした。

 鹿児島県教育委員会によると、これまでに学校や児童生徒から香害に関する相談はない。県保健体育課は国が作成した啓発ポスターで、県立学校や市町村教委に香りへの配慮を呼びかけている。

 香害を研究する新潟県立看護大学の永吉雅人准教授は「子どもは具合が悪くても理由が分からず、重症化するまで気付かないことも多い」と説明する。「学校側は症状を理解し、子どもに寄り添うことが重要。芳香剤やせっけんを無香料に替えるなどの対策が求められる」と話した。

鹿児島のニュース(最新15件) >

日間ランキング >