無罪になっても“犯人”のレッテルは消えない――ネット社会で加速、逮捕の影で軽視される裁判報道…ジレンマに苦しむ取材記者の深い問い

2025/10/15 11:27
映画「揺さぶられる正義」の一場面(ⓒ2025カンテレ)
映画「揺さぶられる正義」の一場面(ⓒ2025カンテレ)
 硬膜下血腫、眼底出血といった「揺さぶられっ子症候群(SBS)」を巡っては、2010年代から保護者が赤ちゃんを激しく揺さぶる“虐待事件”として逮捕や起訴が相次ぎ、多くのえん罪が生まれた。当事者などを取材した調査報道をまとめた関西テレビのドキュメンタリー映画「揺さぶられる正義」が鹿児島市のガーデンズシネマで公開されている。

 監督は関西テレビ報道記者の上田大輔。同社に企業内弁護士として入社後、記者に転じる。SBSを取材する中で、子どもの命を守る使命感を持ち診断にあたる医師、無実を訴える被告と家族に寄り添い、事故や病気の可能性を調べる刑事弁護人や法学研究者によるプロジェクトに行き着く。そこでは「虐待をなくす正義」「えん罪をなくす正義」が激しく衝突し合う。やがて、無罪判決が続出する事態が起こっていく。

 一方で、報道のあり方にも一石を投じる。刑事事件はセンセーショナルに報じられるが、逮捕時に比べ裁判の扱いは小さく、無罪になっても“犯人”のレッテルはネット空間から消えることはない。報じる側の暴力性を自覚し、ジレンマにさいなまれる上田。8年にわたる記録は、見る者に深い問いを投げかける。

 129分。15日まで(14日休館)。ガーデンズシネマ=099(222)8746。

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