鹿児島県警幹部(奥)が出席し、不祥事再発防止策について話し合われる県議会総務警察委員会=9月25日、同委員会室
不祥事の相次いだ鹿児島県警が再発防止策に取り組んで1年が過ぎた。刷新が期待される一方、県民の「県警は変わった」という実感は広がりを欠いているのが実情だ。連載「検証 鹿児島県警」第5部は、組織のあるべき姿を問い直し、改革の行方を展望する。(連載・検証 鹿児島県警第5部「組織改革の行方」①より)
県警の野川明輝前本部長が9月下旬、東京都内で南日本新聞の取材に応じた。2022年10月から24年11月までの在任中、現職警察官らによる情報漏えいや性犯罪などが続き、自らも元生活安全部長=国家公務員法(守秘義務)違反の罪で起訴=から「職員の犯罪行為を隠蔽(いんぺい)しようとした」と名指しで批判されている。
野川氏は自身に向けられている疑惑に対して「当時答弁した内容が全てだ」と改めて否定。その上で、24年8月に公表した再発防止策に関して「自分が考えた取り組みが十分機能しているかどうか気にはなる。しかし、今の立場では心の中にとどめておく以外にできることはない」と述べた。
再発防止策は(1)職責自覚と高い職務倫理の養成(2)個人情報保護への意識向上(3)的確な指揮統率と組織的対処の強化(4)県民への誠実な姿勢-の4本柱を掲げる。
野川氏は改革の取り組みについて「県民の信頼を再び得るには時間がかかる。論より証拠として、実績を積み重ねるうちに伝わると思う」と話した。
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再発防止策は県警職員にどのような効果をもたらしているのか。県警は25年5~6月、全職員にアンケートを実施した。回答した3000人余りのうち86%が「不祥事に対する意識が高まった」と答えたが、6%は「高まらない」と回答。隅々まで効果を行き渡らせる難しさを浮き彫りにした。
対策の在り方を問う項目では16%が「業務への支障が懸念され、施策の厳選が必要」と答えた。他方で県警を管理する県公安委員会の委員は7月の定例会議で「実行にかける時間を減らすのは早い。意見に耳を傾けつつ、もう1年経過をみて検討してもいいのではないか」との見解を示した。
9月の県警定例会見で、安達裕也警務部長はアンケートを踏まえ「風通しが良く、意見を言いやすい職場になってきている」と評価した。半面「全職員の意識徹底は不十分」との認識も示し、今秋中にも施策を更新、公表するとした。
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しかし同時期にあった県議会総務警察委員会では、再発防止策に取り組む県警の姿勢を巡り議論が紛糾した。委員の一人が「県警は過去の不祥事にけじめをつけられていないのではないか」と指摘したからだ。
22年に詐欺被害を訴えた女性に鹿児島南署が適切に応じなかった事案を引き合いに「女性は今も県警の対応に納得していない。誠意ある対応があれば、このような不満は生まれないのではないか」と追及。質疑中に県警側の回答者が決まらない一幕もあった。答弁は終始かみ合わず、委員は「質問に答えていない」といらだちを隠さなかった。
再発防止策の成果が分かりにくいという声は、県警に住民の意見を反映する警察署協議会の委員からも漏れる。ある会長は「日ごろの仕事ぶりから努力していると信じてはいる。ただ、直接取り組みを見ることはできず、はっきりとした実感があるわけではない」。別の会長は「ホームページまでたどりつかないと分からない上、情報を掲載しているだけなら他の企業と変わらない。県民に見られている意識を持ち、人目につく場所で取り組みの成果を示してほしい」と求めた。