鹿児島も、佐賀も…不祥事を起こした警察に共通 「公安委員会がある」を理由に第三者委設置に後ろ向き

2025/10/19 11:38
特別監察に入る警察庁関係者=2024年6月、鹿児島市の県警本部
特別監察に入る警察庁関係者=2024年6月、鹿児島市の県警本部
 不祥事の相次いだ鹿児島県警が再発防止策に取り組んで1年が過ぎた。刷新が期待される一方、県民の「県警は変わった」という実感は広がりを欠いているのが実情だ。連載「検証 鹿児島県警」第5部は、組織のあるべき姿を問い直し、改革の行方を展望する。(連載・検証 鹿児島県警第5部「組織改革の行方」②より)

 鹿児島県警は再発防止策の目玉として、警部補以下の職員からなる「改革推進研究会」を新設した。組織や職務上の課題について自由に話し合い、本部長に直言できる仕組みで、風通しを良くし、帰属意識を高める狙いがある。

 元福岡県警本部長の田村正博・京都産業大法学部教授(警察行政法)は研究会の仕組みについて、「警察組織は直属の上司の指示が絶対。彼らを飛び越えて直接本部長に意見するとなると、二元的な上下関係が生じる」と指摘する。「日頃接する上司に忖度(そんたく)し、結局は本部長に本音を言えない恐れもある。形骸化しない工夫が必要」と述べた。

 県警監察課によると、研究会は9月末までに全27署や県警本部の各所属などで計304回開かれた。ここで上がった職員の意見はホームページに一部掲載しているが、会は原則非公開となっている。

■ □ ■

 再発防止策は2024年6~8月に特別監察に入った警察庁の指導が反映されている。詳細を確認するため南日本新聞が情報公開請求で同庁から入手した資料には、特別監察では同庁首席監察官ら3人が(1)関係書類の確認(2)関係者からの聴取(3)再発防止策の指導-を実施したとあるのみで、具体的な内容は不明だ。

 県警は特別監察を受け「県公安委員会の管理の下、警察庁の指導を踏まえて再発防止に取り組む」との認識を示す。同年11月に就任した岩瀬聡本部長は「改革には外の意見が重要」と言及。以降、社会保険労務士、弁護士、認定心理士らを招き、ハラスメントやジェンダー、組織マネジメントなどの講話を受けている。

 しかし、外部の監察、指導によって県警内部を検証した主体は、警察庁と県公安委のみであるのが実態だ。25年9月の県警定例会見で、安達裕也警務部長は「公安委制度がある。第三者委の設置は検討していない」と明言した。

■ □ ■

 警察の不祥事を巡っては同月、佐賀県警科学捜査研究所元職員によるDNA型鑑定に不正があったと明らかになり、県議会などが第三者機関による検証を求めている。しかし、鹿児島県警と同様、佐賀県警も「第三者的な立場である県公安委員会」の確認を経たとして、「第三者機関の設置は必要ない」との立場だ。

 警察に対する第三者機関の介入はなぜ難しいのか。田村教授は「地方公務員法で定める守秘義務を課された県公安委とは異なるため、秘匿性の高い業務内容や情報は出せない。そのため踏み込んだ調査も期待できない」と話す。

 一義的には、県公安委が市民目線で緊張感を保ち、組織を点検、検証する必要があるとみる。「例えば県議会で、施策内容や取り組み状況について県公安委員長が主体的に見解を述べるなど、県警に対する客観的評価を示すことが求められる」と指摘した。

鹿児島のニュース(最新15件) >

日間ランキング >