再審制度の法改正「今秋の臨時国会で実現を」 訴える日弁連「逃すと検察有利な内容に」と警戒 鍵握る自民、高市首相の動向に注目

2025/10/26 06:00
超党派議員連盟の総会であいさつする前川彰司さん=8日、国会内
超党派議員連盟の総会であいさつする前川彰司さん=8日、国会内
 有罪が確定した裁判をやり直す再審制度を巡り、臨時国会での法改正に注目が集まっている。超党派の国会議員連盟が作成し、野党6党が共同提出している刑事訴訟法改正案が審議入りするかが焦点だ。法制審議会(法相の諮問機関)の専門部会では来年の通常国会を視野に制度見直しの議論が進んでおり、市民団体や日弁連は「臨時国会を逃せば、法務検察寄りの改正になる」と警戒している。

 「国権の最高機関である国会が冤罪(えんざい)防止の確固たる方向性を示す。運動にドライブをかける」。約4カ月ぶりに国会内で開かれた8日の超党派議連の総会。21日の臨時国会召集を前に、会長の柴山昌彦衆院議員(自民)は力を込めた。

 この日は1986年の福井中3殺害事件で懲役7年が確定し、8月に再審無罪判決を受けた前川彰司さん(60)が出席。「福井事件の場合は旧証拠の中に新証拠があった。法改正で証拠開示は絶対だ。検察は法に従ってほしい」と訴えた。前日には、日弁連が臨時国会での法改正実現を後押しする集会を国会内で開いた。

■証拠開示後退恐れ

 国会議員の半数超が加入する議連は、先の国会で冤罪被害の早期救済に向けた刑訴法改正案をまとめた。請求があった場合の裁判所の証拠開示命令▽再審開始決定に対する検察の不服申し立ての禁止▽過去の審理に関与した裁判官の担当除外▽手続き規定の整備-の4点に絞り込む内容だ。

 4月に始動した法制審部会は証拠開示のルールを設ける方向で議論が進む。ただ、委員・幹事に「新証拠と関連がある範囲に開示を限定すべきだ」との意見があり、裁判官の裁量に委ねられた現在より運用が後退する可能性が指摘されている。検察官抗告の禁止をはじめ、その他13項目の論点も意見の対立が顕著だ。

 79年に鹿児島県大崎町で男性の変死体が見つかった「大崎事件」では、原口アヤ子さん(98)の再審開始が過去3回認められたが、いずれも検察官抗告によって上級審で取り消された。法制審部会の委員で大崎事件弁護団共同代表の鴨志田祐美弁護士は「(検察官抗告の禁止は)法制審の取りまとめには入らない」と言い切る。

■鍵握る自民

 議連がまとめた改正案の共同提出に自民、公明、日本維新の会の3党は加わっていない。議連幹部は「一刻も早く全会派の同意を得て法案を成立させたい」とするが、21日召集の臨時国会は各党が経済対策に注力することが見込まれ、審議入りは不透明な情勢だ。

 自民内には元法相らを中心に議員立法での改正に慎重な意見が根強い。一方、高市早苗首相は総裁選公約に「冤罪を防ぐための再審法改正や刑事司法改革」を掲げており、党内手続きの進展を期待する声もある。

 大崎事件の発覚から46年を迎えた15日、市民団体「再審法改正をめざす市民の会」は国会前で国会議員への要請行動を実施した。鴨志田弁護士はマイクを手に力を込めた。「再審法を改正しなければアヤ子さんを救えない。国会の手でやらないといけない」

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