来春開校する「学びの多様化学校」の体験通所で、久しぶりに給食を食べる不登校の生徒たち=10日、志布志市学校給食センター
鹿児島県教育委員会は29日、県内公立学校の2024年度問題行動・不登校等調査結果を発表した。小中高生の不登校は前年度比244人増の5676人で、7年連続で最多を更新。特別支援学校を含めたいじめ認知件数は820件増の1万1486件だった。
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鹿児島県教育委員会が29日発表した問題行動・不登校等調査の結果は、不登校の児童生徒が全国と同様に最多を更新した。県内では来春、志布志市とさつま町が「学びの多様化学校(不登校特例校)」を公立で初めて開校するなど、受け皿づくりが進む。専門家は、子どもに合わせて柔軟に教育課程が組める多様化校を評価する一方、「本来はすべての学校で対応できる体制が必要だ」と指摘する。
「一緒に食べるとおいしいね」。10月10日、志布志市学校給食センターの一室で、私服姿の中学生3人が久しぶりの給食に舌鼓を打っていた。
市教育委員会が9月末から開く、多様化校の体験通所だ。入学希望者が2週間通い、来春からの登校に備える。不登校だった2年生女子は、1日も休まず通所。「少人数だから通いやすそう。学校ができるのが楽しみ」と喜ぶ。
市が計画するのは、中学校として独立した「本校型」。市役所有明庁舎別館を改修し、教室のほかスクールカウンセラーが常駐する相談室も整備する。標準授業時数から140時間減らした1日4時間授業など、ゆとりを持たせたカリキュラムを計画する。
さつま町は宮之城中の一部学級を多様化校とする「分教室型」で、山崎小の特別教室棟を活用。進路や地域について学ぶ探究学習や社会生活技能訓練を増やす。中山春年町教育長は「居場所としてだけでなく、社会的自立に向けた力を身につけられる」と強調する。
多様化校は4月現在、全国に58校。来春はさらに増える予定だ。立命館大の春日井敏之名誉教授(臨床教育学)は、受け皿の広がりを評価する一方、「不登校生への後追いの支援にとどまる」と指摘。普通校も含めた未然防止策の必要性を訴える。
次期学習指導要領を検討する中教審の特別部会は、不登校生に対応した教育課程が組めるような制度設計を進めている。春日井名誉教授は「特例ではなく、多様なニーズに対応できる学校づくり、教員の育成が当たり前になっていくべきだ」と提言した。