連続テレビ小説『あんぱん』の場面カット(C)NHK
2025年度前期の連続テレビ小説『あんぱん』(月~土 前8:00 NHK総合 ※土曜日は1週間の振り返り/月~金 前 7:30 NHK BS、BSプレミアム4K)。今回は、ヒロイン・朝田のぶ(今田美桜)の夫となった柳井嵩役の北村匠海にインタビューした。
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中園ミホ氏が手掛ける第112作目の連続テレビ小説は、アンパンマンを生み出したやなせたかしと妻・暢の夫婦をモデルに描く。生きる意味も失っていた苦悩の日々と、それでも夢を忘れなかったヒロイン・朝田のぶと柳井嵩の人生。何者でもなかった2人があらゆる荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現したアンパンマンにたどり着くまでの道のりを通じて、生きる喜びが全身から湧いてくるような愛と勇気の物語を届ける。
北村演じる柳井嵩は、幼少期に新聞社の特派員だった父を亡くして伯父の家に引き取られ、転校先の学校でのぶに出会う。若い頃から漫画や絵を愛した。のぶに思いを伝えられないまま、のぶは次郎と結婚してしまい、意気消沈。東京高等芸術学校卒業後、出征。戦地での壮絶な経験を経て復員後、また漫画を描きたくなり、のぶと同じ高知新報に入社。その後、のぶに長年におよぶ思いを伝え、結婚。高知新報を退職後、三星百貨店宣伝部での仕事を経て、漫画家一本でやっていくことを決意。のぶとともに「逆転しない正義とは何か」を探していく。
その後、嵩が作詞、いせたくやが作曲した「手のひらを太陽に」がヒット。漫画以外の仕事で忙しく働き、漫画を描くことに挫折しかけていたが、のぶとぶつかったことでもう一度鉛筆を握り、「アンパンマン」の原型が誕生。八木に詩の才能を見出され、詩集「愛する歌」を出版。ラジオドラマ「やさしいライオン」の脚本も手がける。
2024年9月8日に高知ロケでクランクインし、25年8月22日に主演の今田とともにクランクアップを迎えた北村。約一年間に及ぶ撮影を完走し、改めて現在の心境を語ってくれた。
「この一年間は、本当に長い時間でした。年齢も重ねましたし、柳井嵩という役は、一年間ずっとうじうじしっぱなしで、悩み続け、もがき続けなければならなかった。その姿に視聴者の皆さんがイライラする瞬間もあったと思いますし、実際に僕自身もイライラすることがありました(笑)。ただそれほどまでに役と一体になって日々を過ごしていたんです」
作品中盤に描かれた戦争シーンでは、並々ならぬ思いで真っ向から撮影に挑み、演技面はもちろんのこと、“水抜き”もするほど戦前・戦中・戦後の体型作りも徹底した。
「芝居をすることが当たり前になる。この朝ドラの期間は、改めてそんな贅沢な時間だったと実感しました。一日の大半を芝居に費やす生活が一年も続くと、嵩として、そして役を通した言葉の方が、自分にとって自然でニュートラルなものに感じられてくる。その感覚はこれまでの役者人生にはなかったことでした。僕はもともと現場では、常に“役”を客観的に捉えようとしてきました。自分を役に重ねすぎないよう、どこかドライに構える部分があったんです。でも一年間という長期にわたって演じていると、どうしても主観的にならざるを得ない瞬間が訪れる。その時にこそ、いいシーンが生まれることがある。そうした成功体験も積み重ねられましたし、本当に有意義で贅沢な一年間だったと思います」
今田とは、映画『東京リベンジャーズ』など共演歴が深く、本作で“6度目の共演”となったが、一年間の朝ドラ撮影を経てさらに絆が深まった。
「後半は特に“支え合う”という言葉が一番ぴったりでした。この作品は、のぶが主演であって、柳井嵩というのは、そののぶを支える立場にあります。一年間の撮影を通じて、いろんな出来事がある中で、のぶを演じる今田美桜さんが立ち止まったり、後ろを振り返ったりする瞬間を一番近くで見てきました。そのたびに話し合いながら、のぶと嵩、それぞれの思いや二人の歩む道筋を言葉にして確認し合ってきました。芝居の場面でもそうでしたし、カメラが回っていない時でも、脚本やシーンについてずっと語り合っていましたね。
座長として作品を引っ張る姿を一番近くで見守り、支えた。その中で改めて“役者・今田美桜”の魅力を再確認したという。
「特に感じたのは、彼女の責任感の強さです。その強さがのぶという役に直結していたと思います。現場では常に明るさを振りまいてくれて、まさにひまわりのような存在でした。これは以前ご一緒した時から変わらない姿でしたが、その明るさの裏で、迷いや悩み、悔しさを抱えていることも知っています。役者という仕事は孤独になりやすいので、誰かと言葉にして消化していく作業が必要ですが、それを二人で共有しながら乗り越えてきました。まるで松葉杖のように、互いに支え合いながら歩んできた一年でした。結局、どんな時も前を向いていたのは、のぶ=今田さんで、その強さにみんなが魅了され、支えられていたと思います」