学生時代から独立を念頭に入れていました。卒業後は一般歯科で修行を積み2017年に開業。医療法人皓星会は息子の名前から付けました。皓星の由来は、周りをひときわ明るく照らす白く輝く星。星にちなんで、クリニック名は『きらり』。公明正大をモットーに、息子の名に恥じぬ仕事をしていこう、という自分への戒めをこめています。
当初から法人化、分院展開といった規模拡大を視野に入れていました。現在は鹿児島市に3クリニック(谷山、吉野、中山)、姶良市に1クリニックの合計4クリニックを展開。何か戦略的なことをしたわけではなく、私の思いに共感してくれたスタッフが集まり、たくさんの患者様や取引業者様に支えられ、その結果として今があると思っています。
治療における理念は『当たり前のことを当たり前に丁寧に』。治療前の診査・診断にこだわり、ラバーダム防湿や拡大視野下での治療など、基本をおろそかにしないことを大切にしています。小手先の技や流行に溺れることなく、原理原則に則った本質的な姿勢は、経営者としても大事にしています。 もう一つ、患者に寄り添う姿勢として、『患者様を家族と思う』をスローガンに掲げています。良い治療は信頼関係を前提に成り立つと考えているからです。
歯科は体を触り、歯を削る外科的な仕事。こちらがいくら一生懸命やっても、患者様に信頼して体を預けてもらわないと踏み込んだ治療は難しい。また、虫歯も歯周病も再発リスクがあります。何十年も口の健康を守るとなると定期検診、メンテナンスも重要。そこまでの長い付き合いを前提に考えたとき、『患者様を家族と思う』というのは、患者様への親身な姿勢と信頼関係構築のための分かりやすいシンプルな考え方だと思っています。
業界の課題の一つは人手不足。例えば歯科衛生士の求人倍率は都市部では20倍を超え、業界全体で採用に苦労しています。一方で資格を持ちながら、さまざまな事情で現場を離れている人もいます。結婚や出産などライフステージに合わせて長く働ける環境の整備が大切ですが、業界全体として態勢づくりは遅れています。歯科は零細企業が多く余剰人員を抱える余裕はなく仕方のない部分もありますが、目をそらしていては何も変わりません。業界の課題に対して一石を投じるために、当院では賃上げはもちろん、子育て世代に対しては時短やパート勤務といった働きやすいモデルケースを整えています。当法人が経営する保育園もあり、育休復帰後はお子さんを預けて仕事を続けてくれているスタッフもいます。
また、歯科治療は歯科医師、衛生士、技工士、受付のチームプレー。それぞれの立場でプロ意識を持ち連携して患者に向き合うことが大切。医院として、チームとして質の高い歯科医療を目指し、社会に対する高い貢献感を持つことが、働くモチベーションとなり定着率の向上につながると考えます。
人生100年時代と言われる中で、社会としても個人としても、いかに健康に長く働けるかが大切です。そのために、労働時間の短縮、人間関係によるストレスの排除など、スタッフの心身の健康に配慮した取り組みを、法人設立以来継続的に行っています。
ある調査によると歯科衛生士の5年以内離職率は40%を超えていますが、当法人では30名以上の歯科衛生士が所属する中、創業以来、入職5年以内の歯科衛生士の離職者は3名に留まっています(2025年1月時点)。このことからも、まだまだではありますが、人材定着の取り組みに対する一定の手応えを感じています。
また、うちのスタッフには、「定年まで働いてほしい」と思っています。本人が望むなら、年齢に関わらず仕事を続けられるよう再雇用制度も整備していきたいと考えており、スタッフとも長い付き合いを前提とした関係構築を、法人として意識しています。
私はスタッフを何よりも大切にしています。そして、私にとって「スタッフを大切にする」とは、「スタッフに、安心と安全と豊かさを提供する」ことです。仕事とは、やらなきゃいけないことであると同時に、人生を豊かにするためのひとつの手段であるべきです。
家族や自分の時間を大切にしながら、安全に、安心して、社会への貢献感を持って仕事を続けられる。そのような職場環境をつくることで、スタッフの人生の豊かさに貢献することが、我々の使命のひとつだと考えています。
歯科医療は「人が人を診る仕事」であり、スタッフの質が医療サービスの質に直結する仕事です。この先どんなにテクノロジーの発達や社会構造の変遷があろうとも、ここが大きく変わることはないでしょう。だからこそ「スタッフを大切にすること」が、患者様ひとりひとりに対する貢献につながると信じています。 きらりデンタルクリニックのHPへ