時計 2020/08/09 16:00

コロナ禍 弔いの場の今 葬儀の簡素化加速、ウェブ中継サービスも

葬儀の様子を複数のカメラを使って伝えるウェブ中継=鹿児島市の吉田葬祭
葬儀の様子を複数のカメラを使って伝えるウェブ中継=鹿児島市の吉田葬祭
 読者から「新型コロナウイルスの影響で葬儀事情はどうなっているのだろう」との声が届いた。投稿者は70歳代の男性で「当事者になった場合の準備を含めて知りたい」という。葬儀社は「3密(密閉、密集、密接)」を避ける対策を取り、新しい工夫も凝らす。故人との別れの場は大きく変わりつつある。

 南日本新聞のご不幸広告には「葬儀告別式は昨今の状況に鑑みて家族のみで相済ませました」という案内が増えた。近年は家族葬など葬儀が簡素になる傾向が強かったが、コロナ禍で一気に加速している。

 密閉された空間に一定時間、大人数が座る葬儀は「3密」の状況が生まれやすい。参列者には重症化が懸念される高齢者も多い。

 出水市の7葬儀社は4月、感染の広がっていた地域からの参列を、たとえ家族であっても自粛してもらうことを申し合わせた。当時とは状況が変わった現在も継続する。神田葬祭(同市)の神田保社長は「これまで大きなトラブルはない。感染拡大の防止という点で理解してもらっている」と話す。
■参列者制限、焼香のみ
 全国葬祭業協同組合連合会は5月、葬儀運営のガイドラインを示した。(1)従来より広めの会場を使う(2)座席の間を空け、焼香の際も距離をとる(3)飲食物は大皿料理を避け、弁当にする-などが主な内容(表)。

 葬儀社は参列の人数を絞るよう遺族に提案。通夜や葬儀の時間を長く取り、焼香の時間をずらしたり、焼香のみで帰ってもらうよう促したりもしている。

 参列できない人向けのサービスも始まった。吉田葬祭(鹿児島市)はウェブによる葬儀の生中継を導入した。3台前後のカメラで撮影。スマートフォンやパソコンを通して葬儀を見られる。伊地知弘幸社長は「参列者の姿や出棺の様子まで伝える。そこにいなくても同じ空間にいるように感じ、見送りをできるサービスにする」と話す。

 有料の追加サービスでこれまで実施例はないが、遺族自身が無料通信アプリLINE(ライン)などを使って、葬儀の様子を撮影し伝える姿はよく目にするという。以前なら失礼な行為かもしれないが、撮影する方も、ウェブで見る方も、抵抗感は薄れつつある。

 同社は部屋の広さや時間にゆとりを持って営めるよう、料金を配慮するなど、取り組みを進める。
■業者「新しい形を一緒に考えたい」
 どんな葬儀にするのかは、慌ただしい中で考えなければならない。積善社(鹿児島市)の川田代泰孝社長は「今の状況を踏まえ簡素にしたいという考えは分かる。だが、後になって『こうすればよかった』と後悔する声を聞くのも事実」と指摘する。

 遺族はもちろん、親しかった人が訃報を知らされずに、最後のお別れができなかったと後悔させてしまうこともある。

 「きちんと業者と相談し、後悔がないよう話し合ってほしい。誰を呼ぶか、どんな葬儀にするかを、存命中に相談する人もいる。新しい弔いの形を一緒に考えていきたい」と提案する。
●故人の喜ぶこと想像する
 葬儀は死者を慰める慰霊であると同時に、残された人の痛みを和らげる追悼の場でもあります。そのかたちはコロナ以前から少しずつ変化していて、自然葬や散骨なども広がっていました。

 ですが、今は感染防止が最優先の課題です。参列できない場合は、同じ時間に手を合わせ気持ちを合わせてもいい。落ち着いた状況になってから、故人をしのぶ場を考えてはどうでしょう。例えば一周忌でも三周忌でも構いません。

 私は参列できない遠方の場合、香典を郵送します。はがきなどでメッセージを添えれば思いは伝わります。迷ったときは「故人はどうすれば喜んでくれるだろう」と想像しましょう。

 一人で悩まずお寺や教会などに相談してください。こんな状況だからこそ、支え合う気持ちを大切にしたいですね。(鹿児島市の善福寺住職・長倉伯博さん)