時計 2020/08/17 20:30

島尾敏雄「空白期を埋める」海軍時代の写真 短編集「魚雷艇学生」の記述と一致 かごしま近代文学館へ遺族寄贈

1944(昭和19)年1月、旅順で415部隊に同人誌仲間の弟を訪ねた際に撮影したとみられる一枚。右端が島尾敏雄(かごしま近代文学館所蔵)
1944(昭和19)年1月、旅順で415部隊に同人誌仲間の弟を訪ねた際に撮影したとみられる一枚。右端が島尾敏雄(かごしま近代文学館所蔵)
 作家・島尾敏雄(1917~86年)の海軍予備学生時代の写真が見つかり、かごしま近代文学館(鹿児島市)に遺族が寄贈した。海軍時代の写真はこれまであまり知られておらず、連作短編集「魚雷艇学生」(85年、野間文芸賞)の記述とも合致することから、同館は「戦争文学の貴重な研究資料になる」としている。

 寄贈されたのは、妻ミホさん(故人)が住んでいた家=奄美市=にあったアルバム1冊と写真23枚(計41種51枚)。写真の裏書きに、「昭和十八年十月二十三日 東鶏冠山北保塁」「昭和十八年十二月十二日 二0三高地」などとあり、43年の入隊後訓練を受けた旅順(現中国遼寧省)の海軍予備学生教育部時代から翌44年秋に加計呂麻島へ赴任するまでの戦争体験を書いた「魚雷艇学生」の記述と重なる。

 吉村弥依子学芸員によると、海軍時代の島尾の写真は、44年夏に撮影された白い軍服姿のものが有名だが、それ以外はあまり知られていない。また、島尾は詳細な日記を付けていたことが知られているが、この時期は日記が途絶えており、「空白期を埋める貴重な研究資料」としている。

 ほかに、同人誌仲間だった俳人・真鍋呉夫(くれお)の弟越二(えつじ)を訪ねた際のものや、同期と思われる人物の写真も多数ある。同館は常設展示の中で順次紹介していくとしている。