
PCR検査結果が出るまでに考えたコト 「不安」渦巻いた2日間 患者と医療従事者双方に負担

■違和感
熱っぽさを感じたのは8月中旬の夕方だった。検温すると37度1分。それ以外の不調はなく、「お盆で疲れたかな」と早めに就寝した。翌朝、のどの痛みで目が覚め、体温は38度に上昇。
「まさか新型コロナか?」
思い当たる節はない。しかし、鹿児島市でも経路不明の感染例が複数発生している。買い物にスーパーぐらいは行くし、仕事で人との接触もある。早速、鹿児島市の保健所に相談の電話を入れることにした。
これまでの報道で、相談が殺到といったイメージだったが、午前8時半に電話すると予想外にすぐつながった。ただ、電話越しに聞こえてくる保健所内のやり取りの声から相談自体は多い印象を受けた。
症状や体温の変化、海外からの帰国者や感染者との接触の有無、家族や職場に体調の悪い人がいないかなどを聞かれ、結論は「現時点では何とも言えない」。かかりつけ医に診てもらうように要請され、地元の内科医院に連絡。症状や保健所とのやり取りを説明すると、発熱外来センター(同市鴨池2丁目)を紹介してくれた。今の鹿児島県の感染拡大や風邪との区別がつかない症状を考えれば、個人病院で初診の患者を受け入れるのは難しいのかもしれない。
■発熱外来センターへ
約1時間後に発熱外来センターから電話があった。これまでと同様、症状や人との接触状況、自家用車の利用が可能か、車の色・ナンバーなどを聞かれ、同センターでの診察が11時に決まった。駐車場に着いても連絡があるまでは窓を開けず車の中で待つよう伝えられたため、エアコンをつけたまま指示があるまで待つ。センター内から職員が現れ、窓をわずかに下げて保険証を手渡す。通常の病院受診は保険証を受付に提出し、問診票を書いて呼ばれるまで待つ、という流れだが、今回はまず人と接触しない。新型コロナをいや応でも意識させられる。
しばらくして、マスクにフェースシールド、キャップ、防護服と完全防護した看護師に誘導され、センター内に入る。ドアノブはもちろん、手指消毒用のボトルのポンプにも触れず、なるべく廊下の中央を歩くよう促される。診察室に入ると、こちらも完全防護の医師が待っていた。患者の座る椅子と診察台の間に仕切りがあり、パソコンの画面やキーボードなど目に付く機材はカバーがかけてある。
問診では、人との接触歴を詳しく聞かれた。相手の職業や家族構成、接触時の距離やマスク着用の有無、その時の体調の様子まで細部にわたった。陽性だった場合の濃厚接触者はこうして特定していくのだろう。血液検査、検尿、レントゲンで調べることになり、結果が出るまでの約1時間半、車内で待つ。じっとしていると、つい「万一、新型コロナだったら」と考えてしまう。家族にはしばらく会えず、会社にも行けない。「大変な迷惑をかけてしまう。申し訳ない」と暗い気持ちになっていた。
再びセンター内に呼ばれ、説明を受ける。レントゲンの結果、肺炎の症状は見られないといい、のどの痛みもとりあえずの診断名は「急性咽頭炎」。つい、「よかったあ」と本音が漏れてしまった。しかし、医師は「多分新型コロナとは違うと思うのですが、症状は風邪と似ているし見分けるには今のところPCR検査しかないんです」とのことで、検査を受けることとなった。この場ですぐに検査かと思ったが、午後3時すぎに違う場所で、しかもドライブスルー方式だという。詳しくは、携帯電話に連絡が来ることになり、センターを後にした。
とりあえずとはいえ、「急性咽頭炎」という診断が出て少しほっとしたものの、検査するまで分からない。炎天下の車内でこれ以上待つのはきつかったため、一度帰宅した。家族はお盆時期とあって発熱前に自宅とは別の実家にいるので、心配は薄かったが、万一陽性なら無症状の段階で感染させている可能性もある。子供も小さく、親は高齢だ。会社にも連絡をしないと・・・。とにかくいろいろな考えが頭をめぐる。
■鼻に綿棒
午後3時半すぎ、指定された鹿児島市内のある場所に向かう(検査場所は非公表)。駐車スペースに車を入れると、マスクをした3人の職員の姿が目に入る。「窓を開けないでください。携帯電話に連絡します」と書かれたカードを掲げた男性職員がこちらのナンバーと手元の紙を交互に見ている。発熱外来センターからナンバーが伝わっているのだろう。駐車スペースに案内され、「26番」という番号札がフロントガラスに置かれた。周りを見ると、十数台は車が停まっている。携帯電話に着信があり、名前と生年月日を伝え、順番が来るまで窓を開けないよう説明があった。待つ間に、ここ1~2週間の行動を振り返ってみる。自宅以外では常にマスクを着用し、会社でも定期的に手洗い・うがいをしていた。どうしても「なぜ自分が?」との思いが浮かんでは消える。
順番の来た車は、外から中の様子が見えない半屋内のようなスペースに頭から車を入れる。テレビで見た、韓国のような開放的な検査ではない。入っていく車を見ていると、運転手1人というケースは珍しい。ほとんどが後部座席に同乗者がいる。運転できないぐらい症状が重いのか、運転できない子供や高齢者なのだろうか。
約30分後、自分の順番が来た。車を検査スペースに入れると、完全防護姿の女性が「PCR検査を受ける人は手を挙げてください」と書いたカードを持っている。手を挙げると、女性が運転席に近づき、窓を開けてエンジンを切り、シートを倒すよう促される。「マスクを下げて鼻だけ出してください」と言われた通りにすると、完全防備の男性に入れ替わり、長さ10センチぐらいの綿棒を右の鼻の穴に突っ込んだ。綿棒を2回転ぐらいさせただろうか。痛くはないのだが、強烈な違和感があり息苦しい。「後は抜くだけですから」といわれ、数秒待ち、綿棒が引き抜かれた。むせて咳が出そうになるが我慢する。鼻から水が入った時のような味覚が口の中に広がった。自宅で読むようにと、今後の注意事項を書かれた文書を渡され、スペースを出た。
翌日電話で伝えられた検査結果は「陰性」。大丈夫だと思ってはいたが、肩の力が抜け、家族や会社にすぐに一報を入れた。ただし、PCR検査でも引っかからない場合もあるという。すぐに出社することは控え、数日様子を見るよう指示された。この日の検温は37度。もし、薬が効かず、味覚や嗅覚の障害、息苦しさなどがあれば、再度保健所に連絡するように念を押される。翌日発表された鹿児島市の感染者数は「0」。同じ場所で検査を受けていた人たちも「陰性」だったということで、戦友のような気持ちも生まれた。
PCR検査を受けて思ったのは、新型コロナの感染拡大が本当に医療を必要とする人が診察・治療を受けられなくなる危険性を膨らませている現実だ。体調が悪くても地元の医療機関をすぐに受診できない。診察が決まるまでに相応の時間がかかり、決まっても待合室ではなく車内で待つことになる。エアコンがあるとはいえ、炎天下の車内でずっと待つのは高齢者や子供にはきついかもしれない。かといって待合室にも入れず、PCR検査もすぐに受けられるわけではない。
医療従事者の負担の重さも実感した。感染するかもしれないという心理的負担に加え、患者一人一人に対応するために費やすエネルギーがほかの病気とは桁違いのはずだ。患者を呼び出すにも外に出なければならない。1人に費やす診察時間もかかり、診察が終わるたびにパソコン等のカバーを替え、廊下や患者の座った椅子なども消毒するだろう。それでいて患者を不安にさせないための気遣いも必要だ。
発熱外来センター以上に、陽性患者を受け入れている病院の負担はかなりのものと想像できる。これがほかの疾病に対応する余力を徐々に奪うはずだ。患者と医療従事者のどちらにも負担を強いる新型コロナ。「感染拡大の収束が見通せなければ、医療崩壊するかもしれない」は決して大げさではない。
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