時計 2020/10/16 10:30

退学処分、学生の父親自殺はデマ 悪質な口コミのネット拡散に困惑〈コロナと報道 ②〉

7月下旬に曽於市の男性が受け取った「感染者の父親が自殺した」というデマ(画像は一部加工しています)
7月下旬に曽於市の男性が受け取った「感染者の父親が自殺した」というデマ(画像は一部加工しています)
 「新型コロナウイルスに感染した学生が退学処分に」「学生の父親が自殺した」-。赤塚学園看護専門学校(鹿児島市)で学生3人の感染が確認された4月中旬以降、インターネット上に真偽不明の情報があふれた。

 文化生活部で教育分野を担当する私は、児童生徒や教育委員会を取材している。感染確認から程なくして、ある保護者から「うわさは本当なのか」と問われ、半信半疑で短文投稿サイトのツイッターを見て驚いた。「かわいそう」「自業自得」といったコメントが並び、無数の人が内容を転載していた。

 「感染した学生は全員在学しており、保護者は自殺していない。悪質なデマに困っている」。同校の西祐樹副校長(37)は10月9日、デマを明確に否定した。「うわさ話を信じ込んでいる人が多い。発信源はネットだが、口コミが加わって広がり、状況を悪化させている」と打ち明けた。

 同校は6月、ホームページを通じて「学生は在籍している」と公表し、デマを否定している。しかし、その後も発信力のある県外の医師がツイッターで「鹿児島の知人から」として冒頭のデマを引用するなど、根拠のないうわさ話が絶えなかった。県内で感染者が判明するたび、赤塚学園の話題は再燃した。

 多くの記者が、ネットで飛び交う話の真偽を問われる経験をした。曽於支局長の三宅太郎記者(45)も、その一人。うわさ話を聞いた複数の読者から「もし自殺に追い込まれたのなら、記事にして社会に訴えるべきではないか」と指摘された。説明を尽くしても理解を示さない人もおり、困惑したという。

 感染した生徒が退学したというデマは、赤塚学園だけでなく、ラ・サール学園(鹿児島市)にも及んだ。生徒が今も登校していると学園側はきっぱり打ち消している。

 こうした中、本紙のインターネット報道にも教訓が残った。6月、新型コロナ関連の検証記事を「『学生は退学』…感染者出た学校にうわさや中傷」との見出しで配信した。

 だが、ネット利用者の一部が、「学生退学」という見出しの冒頭部分だけに注目し、文言が次々と転載され、独り歩きする事態となった。

 デマの拡散は、とどまることを知らない。情報の真偽を見極めるため、できるだけ多くの関係者に話を聞いて裏付けを取る。指先だけで情報をやり取りできる時代になっても、「足で稼ぐ」新聞記者の基本姿勢は変わらない。