
【100年前のスペイン風邪】毒性強めた第2波 「才色兼備」知事夫人の死に県民衝撃 人との距離「三、四尺」と予防策

スペイン風邪の第2波で県知事夫人が死亡したことを報じる鹿児島朝日新聞(1920年1月10日付)
鹿児島県内で5千人を超える死者を出した第1波から10カ月余り、再び「流行性感冒」の見出しが新聞をにぎわせ始めた。
「流行性感冒が愈々(いよいよ)鹿児島にもやって来た 油断大敵=見舞も玄関限り」(1919年12月1日、鹿児島新聞)
市民に向けた予防対策が繰り返し紹介される紙面から、「悪性感冒」に備える様子がひしひしと伝わる。「三、四尺(約1・2メートル)離れ、人の咳(せき)や嚔(くしゃみ)の泡沫(ほうまつ)を吸い込まぬ如に注意すべきである」。人との距離を置く対策も具体的な数字が示されるようになっていた。
「殺人風 呉海軍を襲う 昨年よりも悪性」。大分連隊や舞鶴海兵団、そして都城連隊。軍関係の被害の知らせが連日届く。前の流行で1500人もの工員が感染し、操業に支障が出た鹿児島専売支局のたばこ工場では「大枚百三十余円」を投じて薬品を買い入れた。
第2波が襲ったこの冬の鹿児島は、本当に寒かったという。低温で空気が乾燥した冬季はウイルスが長く漂い、感染が広がりやすい。再流行の条件はそろっていた。
近来又々各地に流行性感冒が襲来しているが県下末吉村の各部落へも侵入し漸次(ぜんじ)蔓延(まんえん)し壮年及び幼児等の死亡者又少なからず(同24日、鹿児島新聞)
前年、都市部からの感染拡大を経験していた県民は、虚(きょ)を突かれたかもしれない。大みそかまでに末吉だけで73人が死亡。「一家4名も死せる」悲報も伝わった。年が変わると、串木野でも約160人の死亡が明らかになった。伊佐郡西太良では「一家5人皆鬼籍に」入ったという。日々の電報には危篤、死亡、重体の文字があふれた。
第2波の強い毒性に、人々が翻弄(ほんろう)された様子も伝わる。
昨年のに比し蔓延は左程(さほど)でないが悪性は一層猛烈を極め是(これ)がため所々死亡者を出す(20年1月8日、鹿児島新聞)
衝撃的なニュースは続く。
「橋本知事夫人逝去」 (同10日、鹿児島朝日)
「才色兼備の賢夫人」。38歳。和服姿の遺影が大きく掲載された。鹿児島新聞も、年末を過ごした霧島温泉で発病、元旦に鹿児島に戻ると41度まで発熱し流産の末に8日死亡したと報じた。熊本や神奈川、北海道と歴任した夫に連れ添い、「生まれ故郷」の鹿児島に戻って2年目の正月に不幸を見たと書き並べた。「哀愁深し知事邸」や葬儀の様子も報道した。
知事夫人の不幸が世間に発表されて以来市民の心にはにわかに不安の度を加へ行くようである (同12日、鹿児島新聞)
著名人の死に県民は衝撃を受け、不安をかき立てられた。
同じ頃、「客船での悲劇」に巻き込まれた女性もいる。
汽船サイベリア丸にてはホノルル発以来、船内流行性感冒蔓延し、三等船客700名中80名の患者を出し内7名は皆猛烈なる急性肺炎を起し続々死亡 (同13日、鹿児島新聞)
その中の一人が国分村出身の妊婦だった。米カリフォルニアから3歳の幼児を連れて帰国中、病で先に戻っていた夫の訃報を船中で聞き、男の子を出産したばかりだった。船内では、患者の隔離や1日2回の健康診断などが実施されたが、女性の命は守れなかった。
感染はその後、東市来や吉松など各地に拡大。県都鹿児島も襲われた。「郡元の鹿児島紡織会社寄宿舎では計200名の工女が枕を並べて病床に呻吟(しんぎん)する」
県内の死者は4千人を超えた。
鹿児島県でマスクが一般に使われ始めたのが、第2波のとき。備えは徹底されていたはずだった。
●このころ
1919年11月、鹿児島市の七窪水源地が通水開始した。近代水道の開設は国内自治体で37番目とされ、全国でも先駆的だった。12月には志布志市の志布志港起工式があった。
同年の東京では、上野広小路交差点に、日本の交通信号の第1号が登場。トマレ、ススメと書かれた木製看板を手動で回転させて使った。東京駅のれんが駅舎や日本銀行本店を設計した建築家の辰野金吾もこの年、スペイン風邪で死去した。
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