時計 2021/04/12 06:00

核ごみ処分場誘致が争点に浮上 13日告示の南大隅町長選 賛成派「地域浮揚の好機」反対派「後世に負の遺産」

過去に核ごみ最終処分場の候補地として上がった南大隅町佐多辺塚地区
過去に核ごみ最終処分場の候補地として上がった南大隅町佐多辺塚地区
 新人3人が立候補を予定する南大隅町長選(13日告示、18日投開票)は、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)最終処分場の誘致が争点に浮上している。元衆院議員秘書の田中慧氏(38)が公約に掲げているからだ。田中氏は処分場の文献調査受け入れで交付される20億円を町民1人当たり30万円の町内限定の商品券にして配ると主張する。「後世に負の遺産になる」「地域浮揚の好機」。町民からは困惑とともに、賛同する意見も聞かれる。

 町長選は3期目の森田俊彦氏(62)が引退を表明。元町総務課長の石畑博氏(65)と元町議の水谷俊一氏(61)の争いとみられていたが、1月下旬に福岡県出身の田中氏が名乗りを上げた。

 同町は国が処分場の適否を示した科学的特性マップで「最適地」に分類される。これまでも処分場誘致や福島第1原発事故の放射能汚染土受け入れが取り沙汰された。当時の知事や住民の反対で立ち消えになった。

 石畑、水谷両氏はこうした経緯や、町が2012年に定めた原子力関連施設を拒否する条例を理由に、誘致に反対の立場を表明。農林水産業を柱とした地域振興を訴える。

 対する田中氏は、人口減が止まらず、高齢化率が48.4%(19年年齢別推計調査)と県内で最も顕著なことを引き合いに、過疎化解消の起爆剤として処分場誘致を打ち出した。

 昨年、北海道の寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村が受け入れた国の文献調査に応募する意向を示し、処分場選定の入り口となる文献調査(2年間)で20億円、その後の概要調査(4年間)で70億円が交付されると強調。「新たな財源で地元の課題を解決し、処分場誘致で雇用も生まれる」と主張する。

 経済産業省によると、交付金を商品券で配布することを禁じた規則などはない。県選挙管理委員会も「特定の人物ではなく、町民全員に配るのなら、公選法に抵触する可能性は低い」とみる。

 これまでのところ、住民が賛否分かれて集会を開くなど表立った動きには至っていない。しかし、「1人30万円の商品券」というフレーズは町内で話題になっている。

 「まちが浮上する最後のチャンス。ほかに方法があれば教えてほしい」。建設業を営む男性(70)は誘致による定住人口の増加と地域経済の活性化に期待を寄せる。「世界最先端の技術を受け入れることで、人口減少に歯止めをかけられる」と田中氏の公約に賛同する。

 一方、自営業の女性(74)は「どれだけ安全と言ってもリスクがあることに変わりはない。次世代に負の遺産を押し付けたくない」と拒否反応を示す。処分場受け入れによる風評被害も懸念し、商品券配布を「金で心を買われるようで不愉快。ばかにしている」と批判した。
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