2021/06/21 11:30

学費抑え、自分のペースで…「大卒」目指す若者増える放送大学 外出減、コロナ下「家で学ぶメリット大」

幅広い年代の学生が参加する面接授業=鹿児島市山下町の放送大学鹿児島学習センター
幅広い年代の学生が参加する面接授業=鹿児島市山下町の放送大学鹿児島学習センター
 新型コロナウイルスの感染拡大で、大学のオンライン授業が増える中、時間や場所に縛られない学びの機会を提供してきた放送大学(本部・千葉市)が改めて注目を集めている。鹿児島学習センター(鹿児島市山下町、かごしま県民交流センター内)の在籍者数は横ばいだが、大学卒業を目指す若者が増えている。一方、ほかの学生と一緒に直接指導を受ける面接授業(スクーリング)は一部をオンラインに変更したり、人数を制限したり、コロナ下の対応を余儀なくされている。

 放送大学は、文部科学省と総務省が所管する通信制の大学で1983年に設置された。教養学部のみで、テレビやラジオ、インターネットなどで学ぶ。大学卒業を目指す全科履修生(在学期間最長10年)のほか、興味のある科目だけ学ぶ「選科履修生(在学期間1年)」と「科目履修生(同半年)」がある。大学院も合わせ、全国で約9万人が在籍する。

■おうち時間

 志布志市の会社員女性(40)は、全科履修生としてこの4月に入学した。初めは会社の仕事に役立つコンピューターのプログラミングだけ学べればいいと考えていたが、近くの図書館で放送大学のパンフレットをたまたま手にし、入学を決意した。

 高卒か大卒かで給料や昇進に差があることを実感し、大学で学びたいという気持ちを以前から持っていたという。「思うように外出できず、まとまった時間を持てる今の状況が背中を押してくれた。コロナ下に家で学べるメリットは大きかった」と打ち明ける。

 今春入学した姶良市の会社員田丸晋一郎さん(34)もコロナ下の状況が後押しした。「外出する機会が減り、時間的にも経済的にも少し余裕ができたのが大きかった」と振り返る。「学費も抑えられ、自宅にインターネット環境がなくても学べる。学びたい人にとてもやさしいと入学して改めて感じた」と話す。大卒と認定心理士の資格取得を目指す。

■全国4位

 鹿児島学習センターには教養学部の1323人と大学院41人の計1364人が在籍。人口10万人あたりの在籍者数は82人余りで、京都、東京、沖縄に次いで全国4番目の多さだ。

 コロナ下、学生数はほぼ横ばいだが、10代と20代の全科履修生が増えている。10代は、コロナ前の2019年2学期は2人しかいなかったが、この4月は21人に増えた。20代も104人から114人に増えている。

 コロナの感染拡大で、一般の大学でもオンライン授業が増えたことなどは影響していないのだろうか。住吉文夫所長(鹿児島大学名誉教授)は「インターネットなどを使い、若者向けのPRを強化しており、そこは何とも言えない」と話す。

 ただ、若者の入学者増は全国的な傾向だという。本部広報課の赤川博之さんは「コロナの影響をどうみるかは難しい」と前置きし、「本学を含め、インターネット等を利用して自分のペースで学習できる通信制大学がコロナ下で注目を集めているのは事実」と語る。

■定員、半分に制限

 5月末の土曜日、鹿児島学習センターで日本国憲法の面接授業が行われていた。「法令集を六法と呼ぶのはなぜでしょう」。鹿児島大学の小栗実名誉教授はクイズも交えながら、国の最高法規である憲法の成り立ちなどを分かりやすく講義した。感染防止のため、定員は約半分の24人に制限。学生は長机に一人ずつ座り、教室の窓は開け放たれている。

 放送大学は、土日を中心に行われる面接授業も売りの一つだ。全国の学習センターが特性を生かした科目を開設し、全国どこででも受講できる。鹿児島学習センターには、鹿児島大学水産学部の練習船「かごしま丸」に泊まり込む「鹿児島湾洋上実習」やかごしま水族館で実習を行う「水族館学入門」などがあり、全国から受講希望者が殺到する。

 ところが、新型コロナの感染が急拡大した昨年の前半は、全国で面接授業が中止に追い込まれ、一部オンラインに切り替わった。現在も県境を越えての受講は原則できない。住吉所長は「講義は週末に集中的に開かれるのでオンラインだけではきついという学生の声もある。感染状況を見ながらできるだけ対面で行えるよう知恵を絞っていきたい」と話した。
広告