ごみリサイクル日本一のまちのノウハウを母国へ。橋渡し役は「漫画と宮本武蔵が大好き」な国際交流推進員。「いつか帰国して、インドネシアに大崎システムを広げたい」|プルナマワティさん

2022/01/08 20:45
「将来はインドネシアに帰り、大崎システムを広げたい」と話すプルナマワティさん=2021年12月、大崎町野方の大崎ものづくり会館
「将来はインドネシアに帰り、大崎システムを広げたい」と話すプルナマワティさん=2021年12月、大崎町野方の大崎ものづくり会館
 ごみリサイクル日本一のまち大崎町の大崎ものづくり会館にインドネシア語が響き渡る。NPO法人の国際交流推進員プルナマワティさん(49)は6日、ビデオ通話で、インドネシア・ジャカルタ州の職員から生ごみを堆肥化する作業の報告を受けていた。「担当者とのやり取りは毎日欠かさない」という。

 発展途上国のごみ問題を支援する町と、母国との橋渡し役を10年以上担ってきた。「プルさん、こんにちは」。町内ですれ違う小学生や高齢者に声を掛けられる。食べきれないほどの野菜をお裾分けしてもらうこともあり、すっかり地域に解け込んでいる。

 ジャカルタ出身。日本語を学んだのは「漫画と宮本武蔵の小説が大好きだったから」と笑う。2000年に来日。静岡県で日本語を学び、05年に鹿児島大学大学院へ。鹿児島、沖縄両県のほとんどの離島を巡り、文化の継承や医療といった地域課題を調査。同じように離島を多く抱える母国との比較研究に打ち込んだ。

 町に移住してきたのは11年。「国際事業を手伝ってほしい」と東靖弘町長に誘われた。町が国際協力機構(JICA)の草の根技術協力事業を活用し、同国デポック市で12年度からごみ減量・再資源化の支援を進めようと計画。現地に詳しい人材を探していた。当時“インドネシアで最も汚い”との不名誉なレッテルを貼られていた都市だ。

 「こんなに多いごみの分別ルールを普及させるなんて絶対に無理」。住民が28品目(当時)もの分別を徹底し、町と企業が連携する再資源化の仕組み「大崎システム」を初めて聞いた時の印象だ。

 インドネシアと日本の環境はあまりに違った。施設整備が進まず、多民族・多宗教で生活様式はバラバラ。文字を読めない人も多い。「ごみ処理は下層階級の仕事との意識が根強く、住民の協力が得られるとは思えなかった」と振り返る。

 実際に暮らしてみると、分別は思ったより簡単だった。「ごみリサイクルが浸透すれば、マナー向上や雇用創出の効果もある」。こう考え、母国での普及へ本腰を入れるようになった。

 役場のチームと協議を重ね、インドネシアの生活様式に合った大崎システムを作った。「説明会に宗教のリーダーを呼ぶ」「文字でなくイラストで紹介する」-。プルナマワティさんの多くの意見が採用された。デポック市は事業開始3年で分別が普及、埋め立て処分場の悪臭も減った。“ごみ処理先進地”になった。

 この間、デポック市の担当者を招いた研修で見本を見せるため、町のごみを処理する「そおリサイクルセンター」に何度も通い、減量・再資源化の仕組みを猛勉強。今では通訳にとどまらず、リサイクル普及指導員として町内の技能実習生に分別を教える。「まずは自分でやって見せて指導する」。こうして築いた信頼関係が宝になっている。

 プルナマワティさんは現在、冒頭のジャカルタ州と、バリ州のごみ減量・資源化の支援に取り組む。新型コロナウイルス下、19年を最後に現地に赴くことができていない。「現場を見てこそ本当の課題が分かり、信頼関係を築ける」と再訪を待ち望む。「将来はインドネシアに帰り、大崎システムを広げたい」と力を込めた。

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