原爆の残り火を見守るスタッフ=南さつま市のアルテンハイム加世田
南さつま市の介護老人福祉施設アルテンハイム加世田は、広島原爆の残り火をともし続け25年を迎える。「平和の火」と名付けた火の前で、入居者が戦争体験を語り継ぐ。ロシアのウクライナ侵攻による不安定な世界情勢を受け、「平和のメッセージを発信しよう」と火を見守る。
福岡県星野村(現八女市)の「平和の塔」にある原爆の残り火を1997年11月、分火して譲り受けた。施設の敷地に建立した約2.5メートルの石塔に点火し、1年中赤々と燃えている。近くに観音像を安置して、入居者やスタッフ約180人のほか来園者も手を合わせる。
立ち寄ると戦時中の話が口を突いて出る入居者も少なくないという。母親が長崎市で被爆したスタッフの古川隆子さん(62)は「戦争の悲惨さは身に染みている。体験者の声は実感として迫ってくる」。
介護福祉士の森薗友貴さん(35)は「貴い命を預かる職務の重みをかみしめる機会になる」と話す。吉井敦子園長(85)は「子どもやお年寄りが犠牲になるウクライナの現状に、若い人も戦争は過去の出来事ではないと胸を痛めている。不戦の思いが広がれば」と願った。