管理者不明の「勝手橋」=鹿児島市下伊敷3丁目
鹿児島県が、県内で400カ所以上確認されている管理者不明の橋の対応に苦慮している。中には「勝手橋」と呼ばれ、住民らが無許可で設置し利用してきた通路目的の橋もある。老朽化により事故につながる懸念があるが、記録がないため管理者の特定が難航し、点検や補修は進んでいない。専門家は「県は住民の安全を確保する責任を果たすべきだ」と指摘する。
鹿児島市下伊敷3丁目の住宅地を流れる甲突川支流の山崎川には、「勝手橋」が6カ所ある。近くの米山五雄さん(77)によると、以前は敷地外に出る通路のない家が川沿いに並び、その住人らが橋を設置したとみられる。「住んでいた人がいなくなって空き家や空き地となり、橋だけが放置されている」という。
うち1カ所を訪ねると、古びたコンクリート製の橋が架かっていた。入り口は板などでふさがれていたが、小柄な人なら出入りできる隙間があった。地元の50代女性は「川沿いは通学路になっており、橋の付近で事故が起きないか心配」と語った。
共同通信のアンケートで都道府県が所管する管理者不明の橋は3月末現在、27府県の9723カ所に上った。このうち鹿児島は426カ所と回答したが、調査の進展に伴い増減する可能性があるという。
県河川課によると、河川管理者である国や自治体の許可なしに架けた橋は河川法上違法で、是正指導の対象。だが、許可申請がなければ誰が設置したか分からない。また、許可を受けていても原則5年の期間内の更新手続きが守られず記録が残っていないケースもある。
管理者が分からなければ崩落などの事故が発生した場合、責任の所在が曖昧になりかねない。しかし、管理者を特定するには橋付近の住民に話を聞く必要があり、予算や担当職員が限られる中、調査は進んでいないのが実情だ。瀬戸口淳一課長は「管理者が不明のままでは費用を請求できず、橋の撤去も難しい。今後もできる限り特定を進めていく」と語る。
県立短期大学の山本敬生准教授(53)=行政法=は、本来「勝手橋」ができないように必要な橋の整備を行うのが行政の責任と指摘する。その上で、安全性に不安がある橋について「県が撤去して架け替え、住民に身近な市町村に管理を委ねるべきだ」と話した。