馬毛島基地計画に賛成・反対? 交付金はもらう意向、でも「迷っている」…八板市長の真意は

2022/09/03 08:39
所信表明後、記者会見する八板俊輔西之表市長=2日、同市役所
所信表明後、記者会見する八板俊輔西之表市長=2日、同市役所
 「やはりはっきりしなかったか」。2日開会した鹿児島県の西之表市議会。同市馬毛島への米軍機訓練移転と自衛隊基地整備計画について、八板俊輔市長が賛否に踏み込むことはなかった。代わりに賛成、反対両派への配慮がにじむ言葉が並んだ。傍聴した市民らは「まだ賛否は言いづらいだろう」と理解を示しつつも、「真意が見えなければ市民も判断できない」と複雑な胸中をのぞかせた。

 市役所では約10人が傍聴。メモに取るなどして熱心に耳を傾けた。

 賛成派政治団体の鮫島忠雄会長(70)は「(市長選で政策協定を結んだ)反対派との関係もある」と、八板市長の心情をおもんぱかった。一方で基地整備による交付金への影響を懸念。「国への協力度合いが問われる。(賛意を示す)中種子、南種子町に後れを取らなければいいが…」

 傍聴の多くは反対派の市民。八板市長が「容認」を明言した場合に備え、抗議活動を準備する動きもあった。反対派市民団体の迫川浩英事務局長(66)は「真意がはっきりしないのは残念だ。このままでは(基地整備に関する)事業が進むだけ。引き続き反対表明を求める」と話した。

 八板氏は2020年10月、市長就任後初めて「失うものの方が大きく、計画に同意できない」と態度を明確にした。昨年1月の市長選では、反対派市民団体と「不同意の立場を当選後も引き継ぐ」との政策協定を結んだ。所信表明には公約を踏み外さず、賛成派や防衛省への配慮に腐心した様子がうかがえる。「計画の進展で市に求められる行政手続きがあれば、適切に対応する」といった文言だ。

 同省幹部は「計画を止めるというニュアンスはなかった」と評価。別の幹部も「今年2月に交付金を受け取る意向を示した時点で大方は決まっている」とみる。

 約25分間の所信表明のうち、基地整備計画に対する考え方の説明に10分近く割かれた。関東から帰省中で、傍聴に訪れた70代女性は「市長の苦悩がにじみ出ていた」。議場から出てきた八板市長は「迷いに迷って直前まで推敲(すいこう)した。今でも迷っているよ」と漏らした。

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