見つけた写真集と地図を広げる稲田三千年さん=日置市伊集院町麦生田
鹿児島県日置市伊集院の稲田三千年(みちとし)さん(75)宅で、80年以上前に出版された支那事変(日中戦争)関連の写真集や地図などが見つかった。稲田さんは「父の盛穂(もりほ)が満州で従軍していた。希望があれば公的機関に寄贈したい」と話している。
写真集は縦19センチ、横25.5センチ、約150ページ。右とじで表紙には右から横書きで「支那事變寫眞帖」(支那事変写真帳)と表記されている。出版元は東京の雄文社。初版は昭和13(1938)年1月で、定価2円50銭。
盧溝橋事件から南京落城までの写真や記事を収録。「威風堂々皇軍の北平入城」「事変導火線の地 盧溝橋を征く精兵」などの見出しが付く。地図には中国の地名が詳細に記され、日本領だった台湾は赤く塗られている。
稲田さんによると、盛穂さん(63年に49歳で死去)は陸軍兵として満州で戦った。部隊や任期は不明だが、一緒に保管されていた写真には「昭和13年5月7日、清化鎭(県)=中国河北省=にて、稲田一等兵」の添え書きが見られる。
盛穂さんは戦争について多くは語らなかったが、風呂で軍歌を歌ったり、「蒋介石を追って重慶まで行った」「満州は寒くて足の指が凍傷になった」などと話したりしていたという。
11年前に亡くなった母親のタンスを整理していて見つけた稲田さんは「今年は父が亡くなって60年。戦争や自分のことを思い出せ、と言われている気がする」と神妙な面持ちだった。