第1ボーンベッドで多数の骨化石を回収する調査メンバー=9月1日、長島町獅子島
■サラリーマン化石ハンター・宇都宮聡さん
9月3日、鹿児島県長島町獅子島で3カ所目となる骨化石の密集層「ボーンベッド(BB)」の発見を発表しました。獅子島が重要な化石の産地であると、あらためて知ってもらえたのではないでしょうか。発見までの歩みを3回続きでリポートします。
調査は8月29日~9月2日、町主催で実施されました。メンバーは、東京都市大学の中島保寿准教授と門下の学生たちに、私を加えた5人です。
前回の2022年度調査は冬で、北風を伴う悪天候が続いて海は大荒れ。発掘に必要な機材が運搬できず、満足な調査や回収ができませんでした。本年度はその反省を踏まえ、海が比較的穏やかな、夏の大潮の時期に開かれました。
調査対象地は島東部の海岸。21年に私が最初に発見した第1BBと、22年に中島さんが見つけた、爬虫類の頭骨らしき部位を含む第2BBの周辺です。地層中に点在する化石を今度こそ回収したい。漁船に機材を積み込み、気合を入れて上陸しました。
第1BBの周辺には白亜紀前期(約1億1千万年前)の御所浦層群の陸成層が分布しています。白亜紀当時に河川が氾濫して堆積した、レッドベッドと呼ばれる赤褐色の砂質泥岩の地層です。その中に、黒褐色の恐竜の骨片が多数埋もれているのが見えていました。
骨片の位置を記録した上で、硬い岩を切断できるダイヤモンドカッターを使い、一つずつ、岩盤から切り出しました。表面の化石を含む岩の塊を切り出すと、その下に別の骨化石がたくさん出てきました。20個以上取り上げたところで、下から大きな骨の塊が現れました。断面は直径15センチほど。ダイヤモンドカッターの刃が届かないほどの大物で、恐竜のものと思われます。
【プロフィル】うつのみや・さとし 1969年愛媛県生まれ。大阪府在住。会社勤めをしながら転勤先で恐竜や大型爬虫類の化石を次々発掘、“伝説のサラリーマン化石ハンター”の異名を取る。長島町獅子島ではクビナガリュウ(サツマウツノミヤリュウ)や翼竜(薩摩翼竜)、草食恐竜の化石を発見。2021年11月には化石の密集層「ボーンベッド」を発見した。著書に「クビナガリュウ発見!」など。
(連載「じつは恐竜王国!鹿児島県より」)