断面が見事に一致した、灘高生発見の化石(上)と私が採集した顎の骨=2015年、大阪市立自然史博物館
■サラリーマン化石ハンター・宇都宮聡さん
大阪府泉南市の和泉山脈山中で発見した化石の写真やデータをカナダのロイヤル・ティレル古生物学博物館研究員(当時)の小西卓哉博士に送り、鑑定してもらいました。博士の見立てでは、私が発見した化石はモササウルス類であることは間違いなく、やはり顎の骨だろうということでした。
露出していた歯の断面には、エナメル質の薄い皮膜が残っていました。次の生え変わりの牙が下からせり上がってきているのも確認できました。小西博士と研究を進めた結果、この巨大な顎化石は、モササウルス類亜科のプログナソドンという種類の近縁種であると判明しました。
プログナソドンはオランダやモロッコ、カナダの約7千万年前の白亜紀層から保存状態の良い標本が発見されています。1メートルを超える巨大な頭骨に、比較的短いものの強力な顎と太い牙を持ち、体長は8メートル以上。まさに“海のティラノサウルス”です。
日本では初めての発見で、国内最大のモササウルス類でした。発見については、2012年に論文発表しました。
その後、私たちの発表資料を分析した神戸市の灘高校地学部が発見地を深く掘り下げ、新たな骨化石を見つけました。二つの化石を合わせるとピッタリ一致し、顎の残りの部分であることが分かりました。
合わせた骨の大きさから、体長は当初の予想をはるかに上回る10メートル超と推察されました。白亜紀の日本の海洋に恐るべき怪物が生息していたことが証明されたのです。
【プロフィル】うつのみや・さとし 1969年愛媛県生まれ。大阪府在住。会社勤めをしながら転勤先で恐竜や大型爬虫類の化石を次々発掘、“伝説のサラリーマン化石ハンター”の異名を取る。長島町獅子島ではクビナガリュウ(サツマウツノミヤリュウ)や翼竜(薩摩翼竜)、草食恐竜の化石を発見。2021年11月には化石の密集層「ボーンベッド」を発見した。著書に「クビナガリュウ発見!」など。
(連載「じつは恐竜王国!鹿児島県より」)