災害時に命をつなぐ水…何L備えればいい? 1人当たり1日3Lというけれど、リュックサックに詰め込んで実際に走ってみた

2024/01/29 07:33
用意した非常持ち出し品。水の分量が重さの鍵をにぎる=鹿児島市与次郎1丁目
用意した非常持ち出し品。水の分量が重さの鍵をにぎる=鹿児島市与次郎1丁目
 能登半島地震の被災地では断水が長引き、災害時の水の大切さが改めて浮き彫りとなった。近年、国は家庭で1人当たり1日3リットル程度の水を最低3日分備蓄するよう呼びかける。読者からは「3リットル以上を運ぶのは負担が大きい」との声も。実際に避難で持ち出す水はどれくらい必要なのか。

 農林水産省は「災害時に備えた食品ストックガイド」で、飲料水や調理用として1日3リットルの備蓄を推奨。支援物資が届かない期間などを考慮し、最低3日分が望ましいとしている。

 ただガイドには避難所に持参する具体的な量は記されていない。鹿児島市古里町の岩森伊津子さん(70)は「1日3リットルという呼びかけをよく目にするが、避難所に持って行く時も同量が必要なのだろうか。高齢者にとって水は重たく、せいぜい1リットルが限界」と語る。

 自治体はどう考えているのか。鹿児島市の防災ガイドマップは「避難場所で1、2泊できるくらい」の準備を求める。

 市は大規模災害時の避難想定者3万7600人の1日分に当たる水を備蓄。1人当たり2リットルのペットボトル2本を提供する予定だ。被害によっては提供が遅れる場合があり、地域福祉課の山室真樹課長は「避難に支障が出ない範囲で持参してもらいたい」と話す。

 県防災研修センター(姶良市)の馬場ひとみさんは「非常持ち出し袋の重さは移動を考え、体重の1割に抑えたほうがいい」と指摘。その上で「3リットルを目安にするのが望ましいが、持ち出し品の優先順位を付けることが必要。家族と分け合うためのコップも忘れないでほしい」と助言する。

 突然起こる地震や津波では備蓄品を持ち出す時間がない場合もある。

 「自主防災組織などで水を購入し、避難所に置くのも有効」。鹿児島大学の岩船昌起教授(災害地理学)は事前に自治会などで配備する取り組みを薦める。「日頃から水を含め、持ち運べる重さなのかも確認してほしい」と訴える。

 水不足は感染症の拡大や災害関連死の増加につながりかねない。一人一人が事前に備え、災害の状況などに合わせ対応することが必要だ。

◇1.5リットルが最も動きやすかった

 災害時、どれほどの量の水を持ち運べるのか。非常持ち出し品をリュックサックに入れ、試した。水は予想以上に重く動きを妨げる。持ち出す品の優先順位を付ける大切さを実感した。

 両手が使えるリュックサックを選んだ。首相官邸ホームページに掲載されているチェックリストに沿って、非常食や防犯ブザーなど約20種類をそろえた。

 まず自宅での備えとして推奨される1日分の水3リットルからスタート。500ミリリットルのペットボトル6本を入れると、総重量は7キロに。肩にずっしりと重さが伝わる。走ったり、長時間歩いたりするのは難しかった。

 ペットボトルを3本に減らしてみた。軽くはないが、全力で走れる。1.5リットルが最も動きやすい量だと感じた。それでも着替えやタオルなどはあふれる。避難所で必要な物は何か。日頃から考えておきたい。

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