総務警察委員会で不祥事案件の再発防止対策について述べる野川明輝・鹿児島県警本部長=8月6日、鹿児島県議会
相次ぐ不祥事や本部長による隠蔽(いんぺい)疑惑に揺れる鹿児島県警を巡り、鹿児島県議会で浮上している調査特別委員会(百条委員会)設置について、南日本新聞はアンケートを実施した。352人が回答し、「設置を希望する」が86.4%にのぼった。「どちらかといえば希望する」の8.8%を加えると、全体の95.2%が百条委設置に賛意を示した。回答者の85%は賛否の理由を聞いた自由記述欄にもコメントを寄せ、「真相を知りたい」「県警の膿(うみ)を出してほしい」など、県議会への期待感と県警再生への強い願いが浮かび上がった。
アンケートは8月31日~9月1日に、通信アプリLINE(ライン)で呼びかけ、352人が回答した。アンケートは多様な声を聞き取るのが目的で、無作為抽出の世論調査とは異なる。
百条委設置への賛否を聞いた問いには、「設置を希望する」が302人と最多で全体の86.4%。次いで「どちらかといえば設置を望む」31人(8.8%)。以下、「わからない」8人、「どちらといえば設置を望まない」5人、「設置を望まない」4人だった。
自由記述欄で理由を聞いたところ、302人が回答した。最多は157人が求めた「真相究明」。「真実を明らかにしないと県警の不祥事は止まらない」(枕崎市・30代女性)、「今の状況では納得も信頼もできない」(鹿児島市・50代女性)など、県議会での質疑や県警の説明への不満があらわになった。
■県民連合が提案、自民が繰り返し先送り
県議会での百条委設置については、県民連合が6月に提案した。これに対し、最大会派である自民党県議団(34人)が設置の可否に関する結論を繰り返し先送りした。南日本新聞が8月上旬、全県議51人に実施したアンケートでは、公明党県議団(3人)とともに「現段階で個別の回答はできない」とし、個人の考えを明らかにしなかった。
「県議を選んだ県民の多くが百条委設置を望んでいる」(鹿児島市・50代女性)、「県警に自浄能力はない。今こそ県議会の存在意義を示すべきだ」(鹿児島市・60代男性)など県議会全体への要望のほか、最大会派の自民党県議団が明確な姿勢を示さないことへの不満も寄せられた。
鹿児島市の70代以上男性は、総務警察委員会の閉会中審査に触れ、「疑念を持たれている県警側の一方的な回答しか得られなかった。一部の自民県議はこれで十分と思っているようだが、このままでは県議会も県警同様、信頼を失う」。姶良市の60代男性は「県民の関心が大きい問題なのに、設置に後ろ向きな議会(自民党)による疑惑隠しとも取れる」と指摘した。
一方で、鹿屋市の50代男性は「真相究明は必要だと思うが、県議会にそもそも審査能力があるのか疑問。専門家による審議を望む」と第三者を交えた場の設置を要望する。
■百条委にも限界はあるが…
百条委は、地方自治法第100条に基づき、地方議会が設置し、自治体関係者が関わる疑惑や不祥事の真相を究明するために開く。姶良市の60代男性は、兵庫県議会で進行中の知事パワハラ疑惑を巡る百条委を引き合いに「鹿児島県が設置せず後ろ向きの議論に終始している事態が腹立たしい。正々堂々と真実を追及して膿を出し切ってほしい」。
ともに元幹部による「トップ告発」が端緒という共通点もある。鹿児島市の70代以上男性は「一連の流れを見ると県警が隠蔽しようとした確率が高いと感じる」としたうえで、「逮捕された県警の元生活安全部長にも出席してもらい告発した真意を問えないか」と提案した。
百条委は、通常の委員会より強い権限を持ち、調査対象の関係者への出頭に加え、証拠や記録の提出を要求できる。正当な理由なき証言拒否や、うそには罰金刑や禁錮刑が科せられる。他方、今回のように裁判中の事案は「証言拒否が認められる可能性がある」(県議会事務局)。証人は初めに真実を述べる旨を宣誓することになっているが、宣誓を拒否した場合は罰則を課せない。
「それでも…」と鹿児島市の50代男性は訴える。「百条委員会を開いたという事実が大事だと思う。何より、その事実こそ、県議会が県民の期待に応える道だと考える」
■県民として恥ずかしい
「全国的に報道されるなか、はっきりした説明の場を設けないと、県警は隠蔽体質を払拭できず、問題と向き合わない県民性だと思われる」(鹿児島市・40代女性)
「百条委を設置しないと県民全体で隠蔽に加担していると思われる」(薩摩川内市・50代女性)
「全国版のテレビでも大々的に放送され、鹿児島県民としてとても恥ずかしいです。今回の事は時間が過ぎて曖昧な結果にするのでは無く白黒はっきりさせてほしい」(鹿児島市・60代女性)
「鹿児島県議会の自民、公明党は、時代の変化や県民の意識に鈍感なのではないか? 真実を明らかにして、誰もが納得出来る結果を出さないと、県政は信頼できなくなる。それを県民は選挙で知らしめるべきである」(日置市・70代以上男性)
アンケートの回答には、県警の信頼回復へ向けて県議会への期待感が色濃くにじんだ。一方で、鹿児島市の40代女性は憤りを超えた空虚さを訴えた。「強い権力を持つ組織の内部で問題を矮小化しかねず、自浄作用も期待できない今回こそ設置すべきだと思います」としたうえで、「百条委設置をすぱっと決められない県議会を見ていると、あなたたちは何のためにいるんですか? 誰のために仕事してるんですか?と歯がゆい。何だかんだ理由をつけて設置しないんだろうなと結末が見えていて、一県民としてむなしいです」と結んだ。