「くろいさ」の顔・博多華丸さんをCMで起用したのは、造り酒屋の三男だった|大口酒造専務

2024/09/06 15:00
大口酒造専務 有満隆明さん
大口酒造専務 有満隆明さん
 「黒ブーム」の先駆けとして知られ、黒こうじを使ったまろやかさと深いコクで人気の「黒伊佐錦」。水や気候に恵まれた伊佐が誇る本格焼酎だ。

■造り酒屋に生まれて
 製造・販売元の大口酒造は、伊佐地区にあった11の蔵元が合併して発足した「大口酒造協業組合」が前身。有満さんはその一つ、有満醸造の三男として生まれた。「家業は兄が継ぐだろう」と、自身は大口高校から福岡工業大学電子機械工学科へ進学した。

 しかし在学中、両親から「跡を継いでもらえないか」と相談を受けた。「焼酎造りの勉強を何一つしていない自分に務まるのか」と悩んだが、大学の恩師が背中を押した。「あなたの学びが焼酎の製造に生かされないことはない。思い切りやりなさい」。卒業後、同組合へ入社した。

 入社初年度は酒類卸売業の南九州酒販に出向し、営業や発注、配送などあらゆる業務の基礎を学んだ。「今振り返っても、本当に大切な時間だった」という1年間を経て、本社に戻ってからは、大学で学んだコンピューターの知識を直接生かせる製品部門に従事した。以来、第二蒸溜所の所長や、2014年に初の県外拠点となった福岡営業所の初代所長を務めるなど、さまざまな部署で力を発揮する。

 福岡営業所では、卸や小売店とのつながりはもちろん、「地域の人たちに『大口酒造が来て良かった』と喜んでもらえる関係を築こうと心掛けた」という。

 その一環で、テレビCMに福岡で人気抜群のお笑いタレント・博多華丸さんを起用した。きっかけは華丸さんがあるテレビ番組で「くろいさ」を愛飲していると話していたことだった。以来、10年間出演し続け、今ではすっかり「くろいさの顔」としてお茶の間に浸透する。

■焼酎を文化として広めたい
 今年4月、前社長の向原英作氏が急逝した。「仕事に対して本当に厳しかった。入社以来、ずっと面倒をみてもらった」。大きな存在を失い、悲しみは尽きない。「向原さんは『100年企業を目指すために大切なことは何か』と常に言っていた。今、迷うときには向原さんならどうするか、と考える。焼酎をブームだけでなく文化として国内外に広めるため、力を尽くしたい」。リーダーの教えを道しるべに、前へと進む。


■今後の目標
 県外や海外でも本格芋焼酎をもっと日常的に、家庭でも飲んでもらえるように広めていきたいです。お酒に強い人も弱い人も、自分に合ったアルコール度数で楽しめるのが焼酎の魅力の一つ。焼酎が日本を代表するお酒になればうれしいですね。

■今これに夢中です
「ゴルフ」
 入社してすぐ始めました。なかなか100の壁を超えることができず、練習場に通い詰めました。今では100以下でラウンドできるようになりました。広大できれいなコースは眺めも良く、思いっきりボールを打ってストレス解消にもなっています。長く続けられたらいいなあと思っています。

― ◆ ―

■有満 隆明(ありみつ・たかあき) さん
 1970年、大口市(現伊佐市)生まれ。大口高校から福岡工業大学電子機械工学科(当時)へ進学する。卒業後の95年、大口酒造の前身である大口酒造協業組合に入社。第二蒸溜所所長や福岡営業所所長などを歴任し、今年4月より代表取締役専務を務める。
フェリア599号(2024/09/07)

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