現状は在庫に余裕がないものの、10月になれば県産の新米が入荷し始める見込みという=12日、鹿児島市の鹿児島パールライス
全国的にコメの需給が逼迫(ひっぱく)し品薄が続く中、関東や北陸の主産地で2024年産の新米の出荷が始まっている。鹿児島県産も既に出回っている早期米に加え普通期水稲も順調に育っており、10月には収穫が本格化する。不足感は徐々に緩和する見通しで、関係者らは消費者に冷静な対応を呼びかけている。
9月中旬、鹿児島市内の複数のスーパーを巡ると、購入数量が制限されていた。品切れも目立つものの「なつほのか」や「イクヒカリ」といった早場の新米が並ぶ店もあった。あるスーパーの担当者は「一時期に比べれば物が入るようになった」と話す。
23年産米は、訪日客の回復による需要増や北陸といった主産地の高温障害などの影響で全国的に民間在庫が減少した。新米が出回る前の端境期に、南海トラフ地震臨時情報や台風10号が重なったことで消費者の備蓄意識が高まり、県内でも買いだめや県外の親族らへ米を送る動きが増え、品薄に拍車をかけた。
主に県産米を卸売りする鹿児島パールライス(鹿児島市)の担当者は、現時点の23年産米の在庫状況は「カツカツ」と明かす。在庫を切らさないよう調整しながら納品しているという。ただ、県内では10月から新米の収穫が本格化する。「本州産も流通しつつあるし、品薄も徐々に落ち着くはず。買い急がず、冷静な対応をお願いしたい」
農林水産省の24年産作柄概況(8月15日現在)は、鹿児島を含む43都道府県で平年並み以上の予測。主産地の新潟県では今月12日からコシヒカリの出荷が始まった。JA全農にいがたによると、23年産は猛暑により1等米比率が県平均で約5%だったが、24年産は同日までの検査分で92%。品質も作柄も平年並みを見込んでいるという。
これから収穫を迎える鹿児島県産も、JA県経済連によるとおおむね生育は順調だ。最大産地の伊佐市で減農薬栽培に取り組む壹岐清次さん(73)は「心配していた台風10号の被害もなく、平年並みとなりそう」と胸をなで下ろす。
各産地では品薄や生産費の上昇を受け、JAが生産者へ仮払いする概算金の増額提示が相次ぐ。県内の普通期米はまだ決まっていないものの、早期米は前年の4割高。壹岐さんは「コメの価格はここ1、2年は特に安すぎた。肥料などの生産コストが上がり離農が進んでいる。価格が上がれば、みんな頑張って作る気になるのでは」と期待する。
一方で、価格上昇が続けば消費者離れが懸念される。JA県経済連米穀特産課の有村純人課長は「消費者が納得できる価格で、かつ生産者が再生産可能な価格が望ましい」としつつ、「県産米を安定して食べられるように生産者の現状を理解いただき、地元のコメを買って食べて応援してほしい」と呼びかけた。