はつり業者の削岩機を使ったら、出るわ出るわ多量の化石。獅子島恐竜ボーンベッドの今夏の調査は大成功

2024/09/23 16:00
獅子島の発掘調査現場で見学者に説明する中島保寿准教授(右)と筆者(右から2人目)=鹿児島県長島町
獅子島の発掘調査現場で見学者に説明する中島保寿准教授(右)と筆者(右から2人目)=鹿児島県長島町
■サラリーマン化石ハンター・宇都宮聡さん

 8月4~8日、獅子島恐竜ボーンベッド(骨化石の密集層、以下BB)の本年度の発掘調査が行われ、私も参加しました。鹿児島県長島町などの主催。今回は鹿児島県の支援を受けた町教育委員会が、岩盤に穴を開けたり削ったりする、はつり工事の専門業者を現場に投入してくれました。

 昨年夏の調査では、ハンドカッターなどを使い、自分たちでBBを部分的に切り出しました。しかし、骨化石がさらに地層深く埋まっていて、手に負えない状態だったのです。

 今回は削岩機を現地に持ち込み、洋上の漁船に乗せた巨大なコンプレッサーから、圧縮したエアーを送って駆動させました。まず、BB上に乗った巨大な砂岩の大岩を半分に破砕。その下に広がる、骨を含む赤い泥岩層を掘り下げ、1畳ほどのブロックとして切り出しました。潮が引いた数時間の隙を狙って進める、難作業です。

 作業を進めると、恐竜の骨の一部が多量に出てきました。回収した、骨をたくさん含む岩塊の重さは、300キロを超えました。岩塊は東京都市大学の中島保寿准教授の研究室で、クリーニング(化石周辺の余分な岩を削り取る)作業と研究が進められます。骨片以外に歯の化石などが出てきたら、恐竜種の特定につながるかもしれません。期待が持てる成果でした。

 今回の発掘調査では、鹿児島大学や阿久根市の鶴翔高校の学生、地元・長島町の小中学生や教員など、たくさんの皆さんが漁船で発掘現場に上陸し、作業の進展を見学しました。貴重な体験になったことでしょう。町が今後も発掘調査を継続してくれることを望みます。

【プロフィル】うつのみや・さとし 1969年愛媛県生まれ。大阪府在住。会社勤めをしながら転勤先で恐竜や大型爬虫類の化石を次々発掘、“伝説のサラリーマン化石ハンター”の異名を取る。長島町獅子島ではクビナガリュウ(サツマウツノミヤリュウ)や翼竜(薩摩翼竜)、草食恐竜の化石を発見。2021年11月には化石の密集層「ボーンベッド」を発見した。著書に「クビナガリュウ発見!」など。

(連載「じつは恐竜王国!鹿児島県より」)

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