キスがしたくてボート部に入った僕。待っていたのはマッチョの海(連載 サンシャイン池崎の「イケザキクエスト第18話」)

2024/10/04 11:30
キスを求めてマッチョの海にこぎ出した頃を思い、ローイングマシンに挑むイケザキ
キスを求めてマッチョの海にこぎ出した頃を思い、ローイングマシンに挑むイケザキ
 鹿屋高校に入学した。理由は男女共学だからだ。

 なんで共学か。それは恋愛がしたいから。なんで恋愛がしたいのか。それは彼女が欲しいから。なんで彼女が欲しいのか。それは当時読んでいた恋愛漫画「BOYS BE…」のようなキスがしたいから。

 そう、僕はキスをするために鹿屋高校に入学した。

 入学してすぐ、親に頼み込んでメガネからコンタクトに変えた。もちろんキスのためだ。部活はどうしよう。どの部活が一番キスに近づけるだろうか。モテそうなのは、サッカー部かバスケ部か…。

 いや冷静に考えろ。俺は運動神経がない。そんなやつは万年補欠だ。補欠はモテない。彼女もできない。つまりキスできない…。何かいい部活はないか。部活を決めきれない日々を過ごしていた。

 ある日の帰り道。中学からの同級生、岩松が話しかけてきた。

 「一緒にボート部に入らない?」

 「ボート部? なんで?」

 「ボート部は県にチームが5校ぐらいしかないから、九州大会とか、全国大会に行きやすいみたいなのよ」

 「えっ? ってことは大会で県外にタダで行けるってこと?」

 九州大会、全国大会に出る→学校で表彰される→モテる→彼女できる→キス。しかも全国とか行ったら、県外で他校の女子との出会いも増えるはずだ。出会いが増えれば、彼女ができる可能性も増える。つまりキスの可能性も増える! しかもボートって、デートの定番ではないか。これだ。

 僕はボート部に入部することに決めた。

 次の日の放課後。僕は岩松と一緒に先生に入部届を提出した。ボート部の活動場所は体育館横のトレーニングルームという。そこは筋トレマシンなどが置いてあり、いろんな部活が自由に使っていい所らしい。

 ん? 海とかプールとかじゃないんだ。少し疑問がよぎったが、教えられた場所に向かった。ここか。木造のトレーニングルームはだいぶ年数がたっているように思えた。扉の向こうからは、重い物を落としたようなガシャーンという音や「うおおおおお!」といううなり声が聞こえる。怖い。なんか想像してたのと違う。でも駄目だ。ここで引き下がったらキスができない。行こう。僕と岩松は立て付けの悪い、横にスライドするタイプの扉をガタガタいわせながら開けた。

 「今日から入部する池崎です」

 「17、18、19、20…ううううう!」

 ガシャーーーン!

 「はあ…はあ…聞いてるよ。よろしくね」

 『よろしくうううう』

 僕らを歓迎する野太い声があちこちから上がった。

 扉の向こうはマッチョの海だった。

 マッチョたちがいうには、ボート部の練習は平日はひたすら筋トレ、土日に大隅湖に行って練習するとのこと。

 …キス無理かも。

つづく

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