物価高も少子化も安全保障も対策待ったなし…課題だらけの日本、かじ取り役を担う石破新内閣に地方は何を思う?

  
2024/10/02 06:00
石破茂氏の首相選出を伝えるアミュ広場の大型モニター=1日午後4時55分、鹿児島市中央町
石破茂氏の首相選出を伝えるアミュ広場の大型モニター=1日午後4時55分、鹿児島市中央町
 「地方を守る」と訴えてきた石破茂首相が1日、新内閣を発足させた。経済の疲弊や物価高、安全保障といった課題に、自民党内きっての論客はどのような道筋を付けるのか。鹿児島県民からは、手腕に期待する声や注文が相次いだ。

◆経済政策

 「頑張って働いても赤字。これまでも県選出の国会議員が要職に就くことがあったが、何も変わらなかったように感じている」。米や子牛を生産する鹿屋市の男性(32)は、ため息交じりに話す。飼料や資材は高止まりする一方で、販売価格は十分に上がっていないとし、「安心して経営できるような環境を整えて」と要望する。

 霧島市福山の建設業の男性(56)は、新内閣を「期待と心配の割合は7対3」と評価する。石破茂首相が掲げる防災省創設や地方創生策は、公共事業が増えて建設業界にはプラスになるとみる一方で、疲弊する地方経済全体の活性化につながるかは未知数という。「地域全体に好循環が生まれるような政策でなければ意味がない」と注文する。

 産業が減る地方では少子高齢化も進む。0歳と3歳の2児を育てる南大隅町の自営業女性(37)は、2人に1人が65歳以上の町の現状に危機感を持つ。町内には小児科がなく、病院通いのために大きな町に引っ越した友人も。災害時に通行止めが相次ぐ道路の整備も課題に挙げ、「地方でも安心して住めるようにし、移住者増につなげてほしい」と訴える。

◆暮らし

 長引く物価高は、特に年金世帯や低所得者の家計を苦しめている。鹿児島市の75歳男性と82歳女性の夫婦は年金だけでは賄えない月が増えた。外出を減らすなど節約しているが、「介護保険料など年々高くなっている。天引きを抑え、手取りを増やす策はできないか」と望む。

 生活保護を受けている同市の女性(52)は、2カ月前に事故で脚を骨折し、車いす生活を送っている。「支え合う仕組みがあれば生活も治療もできる。不安なく生きられる制度をこれからも守って」

 地域特有の事情にも目を向ける必要がある。会社員の傍ら観光にも関わる西之表市の女性(31)は、離島のガソリン価格に対応を求める。種子島では現在、レギュラー1リットル当たり190円台半ば。「島は車社会で産業への影響も大きい。実情を知り、支援して」と要望した。

 「異次元の少子化対策」も環境整備の余地はありそうだ。5人の子を1人で育てる薩摩川内市の団体職員女性(39)は、過去に社会的な孤立を感じる時期があった。「女性活躍と言うが、環境が整っているとは感じない。子育て中の親が孤立しない社会を実現してほしい」と訴える。

◆安全保障

 11月には米大統領選を控え、日米両国のトップが同時期に変わることになる。陸上自衛隊奄美駐屯地が開設して5年が経過した奄美市名瀬に暮らすライターの女性(49)は「中国との外交バランスがどう転ぶのか見通せない」と不安視する。

 安保環境が安定してこそ観光業などを含めた経済活動が成り立つと指摘。「台湾有事が起きれば、奄美や沖縄への影響は避けられない。現在の南西諸島の防衛体制を維持してほしい」と要望した。

 西之表市の区長会で代表を務める男性(66)は「防衛を熟知した大臣と、地方の実情に詳しい総理で頼もしさを感じる」と話す。約10キロ離れた馬毛島では自衛隊の基地整備が進む。「工事で住民への影響が出ていることは確か。地元と国とのつなぎ役になってほしい」と地域の負担軽減につながる政策に期待した。

◆拉致問題

 日置市吹上浜で1978(昭和53)年に北朝鮮に拉致された増元るみ子さん=当時(24)=と市川修一さん=同(23)=の家族からは、石破首相が自民党総裁選で掲げた東京と平壌に連絡事務所を設置して交渉の足掛かりとする政策に対し、疑問の声が上がった。

 増元さんの弟照明さん(68)=東京=は石破新内閣に「何の期待もしていない」と言い切る。石破首相は、被害者救出に向けた意思表示であるブルーリボンバッジを、総裁選の途中から着け始めた。「あまり関心がないのだろう」。連絡事務所については、「北朝鮮という国が分かっていない」と失望感をあらわにした。

 修一さんの兄健一さん(79)=鹿屋市=も「北朝鮮を利することになる」と連絡事務所設置に反対する。かつて拉致議連会長を務めた石破首相に「被害者全員の一括帰国を実現する強い意志を示して」と求めた。

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