避難用スロープでロープを使い、車いすを引き上げる職員=志布志市有明のありあけ苑
鹿児島県志布志市の介護老人保健施設「ありあけ苑」は、8月の日向灘地震を受け、津波発生時の避難場所となる隣接の旧有明病院内階段に「避難用スロープ」を設置した。車いすの入所者を迅速・安全に2階へ避難させる狙いで、職員の負担軽減も図る。9月25日、訓練形式で使い方を確認した。
ありあけ苑は、志布志湾沿岸の通山地区にあり、海抜7メートル以下で海から約330メートルの距離に立地。車いすや寝たきりの人を含む約80人が入所し、昼間は約40人が働く。
施設は平屋建てのため、万が一の時は、病院2階に避難する計画。ただ、エレベーターはなく狭い階段を上らなければならない。2011年の東日本大震災後、2人がかりで車いすを持ち上げ2階へ運ぶ訓練をしてきたが、体重40~50キロの人が乗った車いすを運ぶのは職員負担が大きく、時間もかかっていたという。
今回、他県の施設を参考に、階段の傾斜に合わせた「避難用スロープ」を手作り。病院は閉院しているため、常設が可能になった。
25日の研修会には約40人が参加。防災担当の職員が施設の立地、南海トラフ巨大地震に伴う津波の想定到達時間・水位を示し、「命を守るため、水が届かない所へ逃げること」と呼びかけ。その後、災害時に役割分担する「アクションカード」で行動を確認。車いすにつないだロープを引っ張り引き上げる人と下から押す人の2人一組で階上に避難させる体験をした。
職員からは「スロープの方が人力で運んだ時より楽だった」「夜の停電時の準備が必要」「そもそも病院は地震に耐えられる強度か不安」などの意見が出た。
井ノ上友成事務長は「避難の段取りを職員が体験できた。日々最善の手を一人一人が考えることがいざという時の行動につながる。今後も発展させたい」と話した。