スクールバスが充実の私立に対し公立は…「24年問題」が高校生を直撃、支援に前向きではなかった県も動く

2024/10/15 21:00
JR志布志駅前からバスに乗り込む高校生=3日午前7時40分、志布志市志布志町志布志2丁目
JR志布志駅前からバスに乗り込む高校生=3日午前7時40分、志布志市志布志町志布志2丁目
 地域住民の移動を支える公共交通機関が細ってきている。人口減や過疎化に加えて、新型コロナウイルス下での行動制限に伴う利用減も追い打ちをかけた。鹿児島県内も例外ではない。自由に動ける態勢づくりへどうすればいいか。地域公共交通の在り方を考える。(連載かごしま地域交通 第1部「ゆらぐ足元」⑥より)

 志布志市は2024年度、路線バスやJR日南線を使う市内在住の高校生の通学費を補助する制度を拡充した。もともと志布志高校生向けだったのを、対象を公立私立を問わず高校全般に広げた。志布志高に市外から通う生徒にも以前から通学費の3分の1を補助している。

 市内在住者への補助は定期券や回数券代の半額で上限はない。市によると、7月末までに曽於、鹿屋市を含む3市の6高に通う94人が申請した。うちバスは92人、JR2人。志布志高は50人で、うち38人が志布志市外からだった。

 地元に住む志布志高3年の50代の父親は「3カ月定期で4万円ほどかかり、補助で家計の負担感は随分違う。中学3年の子がいる近隣市の知人も、補助を受けられると知り志布志高を進学先として意識している」と話す。

 中学卒業後の進学先が町内にない大崎町は、高校だけでなく高等専門学校や専修学校も対象とする。バス定期代の半分を補助し、上限は月額1万円。8月末までに3市7高の61人が申請した。

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 志布志市と大崎町の狙いは地域公共交通の存続にある。市の担当者は「通学生は路線バスやJRの主要利用者。乗り続けられるよう支えて路線維持につなげたい」と強調。保護者の経済的負担を減らすことで、バイク通学や自家用車送迎からの移行も期待する。町の担当者も「路線バスは減るばかり。何とかストップさせたい」と危機感を表す。

 薩摩川内市は、子育て支援の一環で中学・高校生の定期代などを補助する。本年度は同市祁答院地域から通う川内高校生を対象に、路線バス終点から自宅までのタクシー利用料の一部も補助している。

 川内高では昨年7月末に通学バスが廃止になり、PTA主体で一部地域の代替バスを運行した。しかし赤字が約500万円まで膨らみ、本年度継続を断念した経緯がある。

 県教育委員会によると、生徒の通学費を補助しているのは県内19市町村。同じ学校に通いながら居住地によって差がある状況も生まれている。

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 昨年から今年にかけ県立高の通学バス廃止や通学ダイヤ減便が相次いだ。運転手不足や残業規制強化による「24年問題」は高校生の通学手段を直撃した。

 県教委の調査で、影響を受けた県立高校生は昨年10月時点で61校中16校945人。今年4月は28校に広がったが692人に減った。昨秋は主に通学バスの減廃便だったのに対し、今春は路線バスが中心だったためとみられる。

 影響を受けた生徒への支援に当初前向きでなかった県は本年度、定期代が増えた県立高校生に「緊急的な措置」として補助を始めた。夏には県立高の全生徒を対象に通学状況調査を実施し、現在集計中だ。今後、結果を踏まえて支援について検討する。

 専用のスクールバスが充実する私立高を意識し、県立高向けの通学手段確保を県に求める声も根強い。バス便がないと、中学生の進路選択時に不利になるとの指摘もある。県教委は「高校生は住民の一部。地域全体で検討する課題と捉えている」と説明する。

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