入部したボート部はマッチョだらけ。高校生活はバラ色じゃなかった(連載 サンシャイン池崎の「イケザキクエスト第19話」)

2024/10/31 13:14
大隅湖でボートを担いで、肩をめり込ませた青春の日々を思い出すイケザキ
大隅湖でボートを担いで、肩をめり込ませた青春の日々を思い出すイケザキ
 鹿屋高校に入学し、ボート部に入部した。

 部活初日。初めて足を踏み入れた木造の古びたトレーニングルームは、汗の臭いが充満していた。天井から極太のロープが3本下がっている。

 「ウラアーー!」

 先輩マッチョが叫びながら素手で登っていく。

 「しゃっ!」。そのすぐ横で、別の先輩マッチョが細めのベッドのようなものに寝そべって声を上げる。掛け声に合わせ、両端にどデカい重りがついた鉄の棒を「ガッシャン! ガッシャン!」と音を鳴らし、上げたり下ろしたりしている。他にも懸垂無限マッチョ、腹筋に重いボールをマッチョに落としてもらっている不思議マッチョもいた。この人たちは何か罪を犯して拷問を受けているのか?

 部活の流れはこうだ。まずはウオーミングアップで学校の外周を2~3周する。次に、腕立て、腹筋、背筋の順番で、それぞれ1分間ずつ限界までやる。それを3セット。続いて懸垂。そしてラスト、スクワットで仕上げる。

 筋トレの経験がなかった僕にとっては、かなりきつかった。だが「土日までの我慢だ」。心にそう言い聞かせ、ひたすらに耐えた。なぜなら、土日は大隅湖に行ってボート練習できるからだ。女子部員もいるし、湖で一緒にボートに乗ったりして爽やかな青春を味わえるはず。きつい筋トレは、土日に女子部員にいい所を見せるための練習で、いわば「アメとムチ」のムチなのだ!

 そして入部して初めての土曜日がやってきた。母親に車で送ってもらって湖に到着した。初めての大隅湖に、マッチョの声が飛ぶ。

 「1年はまず5人乗りのボートで練習だ!」

 きた! ここから僕の青春がスタートするんだ。

 僕ら1年生は倉庫に案内された。

 「まずこの船を肩に乗せ、湖まで運ぶぞ」

 そこには木でできた、バカでかく長い船があった。5人一列に乗るタイプだった。あれ? 恋愛漫画に出てくる女子と向かいあって座るやつとちょっと違うような? 先輩マッチョの圧を感じた僕は深く考えるのをやめ、指示通りボートの端を肩に乗せた。

 「さあ行くぞ! 肩まで行こう! 1、2、3!」

 メリメリメリ。冗談抜きで肩が30センチぐらいめり込むぐらい重かった。湖までは約50メートル。8人がかりで運んだ。

 息を切らしながら到着すると慎重に腰の高さまで下ろし、ボートを着水させる。ほっとして見ると、自分の肩にクッキリと跡がついている。

 そしてボートに乗り込んだ。先頭から、マッチョ、マッチョ、1年、1年、マッチョ、マッチョの順でずらりと並ぶ。いよいよ! 岸を離れ、いざ湖の上に出発した。

 「よっしゃー! 完全にムチとムチだったぜ!」

 高校生活はバラ色でなく、肌色でした。

つづく

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