1年前もこんな天気だった…米軍機は目の前で爆発し海に落ちた。真っ先に救助に走ったのは地元漁師だった。「事故も丸腰も不安」。海の男が心境を語った

2024/11/29 06:03
米軍機オスプレイが墜落した現場の沖合で操業するシマアジ漁船=24日、屋久島沖
米軍機オスプレイが墜落した現場の沖合で操業するシマアジ漁船=24日、屋久島沖
 鹿児島県・屋久島沖で米軍横田基地(東京)所属の輸送機CV22オスプレイが墜落して29日で1年。事故直後、真っ先に捜索へ向かったのはシマアジ漁をしていた漁師たちだった。「今でも事故の光景が忘れられない」。亡くなった搭乗員を悼むとともに、飛行再開後もトラブルが相次ぐ機体への不安は拭えない。

 屋久島沖で始まったシマアジ漁に24日から2日間同行した。数キロ北の屋久島空港に向かう民間機の後ろ姿がはっきり見える。天候に恵まれ、波も穏やか。「あの日もこんな天気だった」。屋久島町安房の漁師中島正道さん(69)は墜落現場となった空港の方角を指さし、つぶやいた。

 昨年11月29日、仲間の数隻と同じ場所で漁をしていた。複数の漁師によると、北から近づいてきたオスプレイは、旋回して空港へ向かった。直後、火花のような光が出て機体が逆さまになった。左プロペラ付近が爆発し、海に墜落。真っ白な水柱と黒煙が上がった。

 漁師たちはすぐに現場へ。約100メートル四方に残骸が散乱していた。半分沈んだ機体、赤のスニーカー、割れたヘルメット-。1人の遺体は見つかったが、他の隊員は確認できなかった。

 機体の近くに目印となるブイを投げ入れた漁師の男性(67)は、事故の記憶がフラッシュバックする。「ここで8人が亡くなった光景は一生残る。家族が乗っていたらと思うと耐えられない」と遺族の心情を察した。あの日から現場海域を通るのは避けている。

 オスプレイは飛行再開後も県内空港に緊急着陸を繰り返す。「事故は二度と起きてほしくないが、また落ちるのではないかと懸念もある」と漏らした。

 空港近くの岩場で釣りをしていた同町船行の平田耕作さん(69)は、向かってきたオスプレイが数百メートル先に墜落する瞬間を目の当たりにした。「世間は時がたつと忘れるから、欠陥を抱えていても再び飛ぶと思っていた」と話す。「平和が一番だが、国際情勢を考えると丸腰も不安。せめて住宅地の上空を低空飛行しないように、政府は米軍と交渉してほしい」

 搭乗員の捜索にあたった中島さんは数年前の講演で聞いた米海兵隊の「遠征前方基地作戦(EABO)」を思い起こす。小規模部隊を島しょに分散させる運用指針だ。25日には台湾有事の際、EABOに基づき米軍が南西諸島にミサイル部隊を展開する臨時拠点を設ける方針が報じられた。

 滑走路がない場所で離着陸でき、航行能力が高いオスプレイは「EABOに最適に見える。訓練などで飛行が増えそう」と不安視。ミサイル拠点については「攻撃対象になれば脈々と続く島々の営みが壊れる。抑止力を名目に、住民に相談なく進めるのはやめてくれ」と憤った。

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