前鹿児島県警生活安全部長の被告(61)=国家公務員法(守秘義務)違反の罪で起訴=が在任中の1月下旬、警察庁宛てに「不適切な懇親会がある」という趣旨の文書を、前刑事部長の名前を使って送っていたことが12日、複数の関係者への取材で分かった。県警はこれまでに送付先を伏せた上で「情報漏えい先とされる札幌市の記者以外にも、前刑事部長名で(事件と無関係の)文書を送っていた」と明らかにしている。
懇親会は2月5日夜、鹿児島市内であった。県警では同日と翌6日の2日間、九州管区警察局の岡部正勝局長(当時)=現・京都産業大学教授=による視察や講話が行われた。会開催は岡部氏からの提案で、野川明輝本部長(同)など県警幹部を含む約10人が出席。被告も参加した。
県警は九州管区局から指導を受ける立場である上、当時は能登半島地震へ職員を派遣しているさなかで、被告はこれらを問題視したとみられる。岡部氏は「視察は鹿児島県の概況説明などを受ける目的だった。会は親睦を深めるためで、災害対応状況を踏まえても問題ないと考えている」と話した。
被告の情報漏えい事件を巡っては、県警が5月下旬、今回とは別の内部情報を記した文書を札幌市の記者に送ったとして逮捕した。その文書には野川前本部長ではなく「前刑事部長が職員の犯罪行為の隠蔽(いんぺい)を指示した」との趣旨が記されていた。県警は「前刑事部長をおとしめるための行為だ」としている。
これに対し被告は「事実を知っているのはごく少数で、送り主が自分だと分からないようにした」と説明。弁護人は「県警の隠蔽を公にしようとした行為であり、公益通報またはそれに準じるものだ」として無罪を主張する方針を示している。