脱線した貨物列車の後方の車両を切り離して移動させる作業員ら=13日午前10時半ごろ、薩摩川内市の川内駅
薩摩川内市のJR川内駅構内で12日未明に発生したJR貨物の列車脱線事故で、同社とJR九州は13日朝までに全12両のうち、後方8両を熊本市の熊本駅に輸送した。脱線した3両を含む前方の4両は現場に残っており、貨車の復旧作業を14日に始める。JR鹿児島線川内-隈之城間は同日も運休が続く。
両社は13日午前4時半ごろ、後方8両を切り離し移動させた。前日に続き、運輸安全委員会の鉄道事故調査官が運転士から当時の状況を聞き取り、脱線した車両の下をのぞき込む様子も見られた。運輸安全委によると、初動調査は終了。来週以降、線路の傷の有無や劣化具合を調べ、事故原因を究明する。
12両編成の貨物列車は12日午前3時ごろ、先頭の機関車1両と続く貨車2両が脱線した。両社は14日午前9時から貨車2両をジャッキで持ち上げ、夕方までに線路に乗せ直す予定。12個の車輪全てが脱線した先頭の機関車は15日以降の作業となる見込み。
JR鹿児島線川内-隈之城間の上下線は13日、普通列車計62本が運休、約7000人に影響が出た。14日も始発から運休し、川内-鹿児島中央間は九州新幹線で振り替え輸送をする。
JR九州鹿児島支社の海老原毅支社長は12日の会見で「11日までに行った点検で、信号とレール設備に異常はなかった」と説明した。
薩摩川内市の田中良二市長は13日、海老原支社長に対し、一刻も早い原因究明と復旧を求めた。市は同日午後に事故連絡調整会議を開き、物流や通学への影響などを報告した。
■JR九州「早期復旧目指す」
JR九州の古宮洋二社長は13日午前、南日本新聞の取材に応じた。12日に自身が現地入りしていたことを明かし、「機関車は非常に重く、クレーン車の据え付けなど(復旧には)手間がかかる印象だ」との見通しに言及。「利用者には迷惑をかけている。運輸安全委員会とともに原因を究明し、可能な限りの早期復旧を目指したい」と話した。
■自宅待機の高校生も 代替バス求める声
薩摩川内市のJR鹿児島線川内駅構内での脱線事故から一夜明けた13日、川内-隈之城間の運休によって高校生の通学への影響が続いた。登校できずに自宅待機となる生徒もおり、早期復旧や代替バスの運行を求める声が上がった。
午前7時過ぎ、隈之城駅には保護者らに送迎された生徒が次々と到着し、電車に乗り込んだ。普段は川内駅を利用する神村学園(いちき串木野市)の高等部1年、田原駿さんは「親に毎日送ってもらうのは大変だと思う。早く復旧してほしい」と話した。
同学園によると、高等部で不通区間を使って通学するのは約130人。13日は川内から九州新幹線で鹿児島中央駅を経由して来る生徒もいた。18人は登校できずタブレット端末による遠隔授業などに切り替えた。
川内商工高(薩摩川内市)は保護者に送迎などを依頼したが、14人が通学できなかった。隈之城駅から学校まで1時間弱歩いた生徒もいたという。荒殿信哉教頭は「不通区間に代替バスを出してもらえると、学習への影響や保護者の負担を抑えられて非常に助かる」と要望した。
県教育委員会によると、12日は休校とした伊集院高を含め県立高8校で計325人が遅刻や自宅待機など影響を受けた。13日は3校で計16人が自宅待機などとなった。