JR貨物脱線事故の影響で入荷遅れを伝える案内=13日、鹿児島市の紀伊國屋書店鹿児島店
薩摩川内市のJR鹿児島線川内駅構内で12日発生した貨物列車の脱線事故により、県内の経済や市民生活に影響が出始めている。生産した工業製品の搬出や県外からの商品の搬入がすでに滞っており、関係者からは早急な復旧を求める声が出ている。
紙やパルプ類を製造する同市の中越パルプ工業川内工場は通常、日曜を除き紙製品を全国へ毎日出荷しており、うちJR貨物は輸送手段の3割を占める。事故後に海上輸送の割合を増やす対応を取ったが、担当者は「影響は大きく非常に困っている。重要な輸送手段のため、一日でも早く復旧して」と要望する。
製品輸送を担う同市の関連会社「中越物産」によると、脱線により空のコンテナも不足。生産は日々続くため、長期化すると工場構内にある保管場所が不足する恐れもあるという。
ギフト向けなど年末にかけて出荷のピークを迎える浜田酒造(いちき串木野市)は、運休が長引く事態に備え、熊本までトラックで運ぶ代替輸送の検討を始めた。出荷予定分はコンテナ数十台分に達する見込みで、「ただでさえ繁忙期でドライバー不足の今、急に便を確保できるかどうか」と担当者は不安を口にする。
鹿児島市の紀伊國屋書店鹿児島店は13日、店内に入荷遅れの案内を掲示した。同日入荷予定分は全てストップ。運送会社から「14日には届ける」と連絡があったものの、それ以降のめどは立たない状態。小森圭悟店長(43)は「クリスマスや年末年始が近く書き入れ時。在庫の補充もできず、売り上げには相当な痛手だ」とため息をついた。
おいどん市場与次郎館(同市)では、14日から開く「青森フェア」に影響が出た。同市場を運営するJA県経済連によると、フェアで並べる予定の青森県産野菜など11商品は脱線した車両に積み込まれていた。急きょコンテナが運ばれた熊本までトラックで取りに行くことになり、販売は昼ごろにずれ込む見込み。キッチンカーで販売予定の「ごぼうスティック」は14日分の販売を諦めた。