路線バスに給油する南国交通の運転手=14日、鹿児島市の同社鹿児島営業所
長引く燃料代の高騰は、鹿児島県内の企業や農家の経営も圧迫している。政府は16日からガソリンをはじめ、重油や軽油などの価格を抑制する補助金を昨年12月に続き縮小する。事業者は「価格転嫁を進めたいが難しい」と悲鳴を上げる。
「この20年で重油代は倍増した」と明かすのは、かんきつ類を栽培するフレッシュ吹上黒川農園(日置市)の黒川明代表(65)。ハウス内の加温には重油が不可欠。値上がりに備え低温でも育つ品種を増やし、ハウスのビニールを二重にして保温効果を高めるなど対応する。黒川代表は「燃料が使えないと出荷時期が調整できない。農家が安心して経営できるよう国は考えてほしい」と求めた。
定置網漁を営む笠沙町漁協(南さつま市)の宿里銀次さん(33)は「魚離れで魚価が低迷する中、燃料高が続けば、いずれ漁ができなくなる」と危機感を募らせる。鹿児島市のキュウリ農家枇榔(びろう)稔さん(66)は、原価の大半を燃料代が占めるものの「消費者のことを考えると、安易に価格転嫁はできない」とこぼす。
乗り物を扱う事業者にとって、燃料代の高騰は企業活動に直結する。
85台の教習車を持つ玉里自動車学校(同市)では、高校生の受講が多い12月以降は燃料補充の頻度が増えるため、いつもより早いタイミングで発注した。西村健司教育部課長(50)は「教習では短距離で停車と発進を繰り返すため燃費が悪くなる。他校との競争を考えると、教習料を上げるわけにいかない」と嘆く。
同校によると、毎月約1万リットルの燃料を必要とし、車両経費の半分を占める。資料の電子化や節電など別の分野で削減する。「繁忙期の値上げで大打撃だ。国は新しい対策を考えてほしい」と要望した。
南国交通(同市)は約300台のバスを保有し、燃料の軽油代だけで月4000万円かかるという。担当者は「県の補助もあるが、まかないきれていない」。
「事業者も苦しい」と話すのは、種子・屋久高速船事業の運営に関わる市丸グループ(同市)の迫田省三専務(67)。鹿児島-種子島の場合は約3000リットルの燃料を片道で消費する。燃料費の高止まりが続いた2024年9月期決算では、前期に比べ燃料代だけで約1億7000万円増えた。「料金改定も視野に入れなければいけない」と顔を曇らせた。