新導入「自己推薦方式」の効果か…県内公立高校の推薦出願0.49倍、07年度以降で最高

2025/01/29 06:30
 鹿児島県教育委員会は28日、2025年度の公立高校推薦入試の出願者数を発表した。全日制は推薦枠2624人に対し、1292人(前年度687人)が出願。平均倍率は0.49倍(同0.28倍)で、2007年度以降で最高となった。このうち従来の学校推薦方式の出願者611人に対し、新たに導入した自己推薦方式は681人と上回った。

 全日制の推薦入試は喜界、楠隼以外の66校153学科で募集。倍率が最も高かったのは松陽(美術)の1.73倍。甲南(普通)の1.50倍、開陽(普通)の1.50倍と続いた。出願者ゼロは山川、大口、串良商、種子島中央、与論の5校。学科別では24校の37学科で出願がなかった。

 推薦枠は原則として普通科が定員の10%以内、専門学科は30%以内となっている。新たな5学科で募集を行った鹿児島女子は、定員320人に対し推薦枠は56%の180人。134人が出願し、ライフ・スポーツ科は1倍を上回った。

 自己推薦は中学校長の推薦が不要で、生徒の意思で志望校に出願できる。錦江湾など59校137学科が導入。甲南など7校は実施を見送った。県教委は「学校推薦が大きく減らず、自己推薦を多くの受験生が活用した」と分析している。

 定時制の推薦は開陽と奄美の2校3学科で計20人を募集。開陽に12人出願があり、平均倍率は0.60倍だった。全日制、定時制とも2月4日に面接などを行い、10日に合格者を内定。3月13日に発表する。

 県教委は楠隼高の一般入試の出願者数も発表。募集枠38人に9人(うち県内6人)が出願し、倍率は0.24倍(前年度0.28倍)だった。入試は2月4日、合格発表は7日。出願者が募集枠に満たなかったため、公立高一般入試でも募る。

■積極的出願へ活性化策奏功
 低調な出願が続く公立高校入試を活性化しようと鹿児島県教育委員会が導入した自己推薦方式が功を奏した。全日制は681人が出願し、全体の平均倍率は0.49倍に急伸。関係者は「好調な滑り出し」と評価する。

 学校推薦のみだった昨年度は0.28倍と低迷。1倍を超えたのは5校6学科にとどまった。県教委は昨年2月、「積極的な出願が期待できる」として、自己推薦の導入を決めた。

 自己推薦では、各校が掲げるアドミッションポリシー(入学者受け入れ方針)を基に受験生を評価する。受験生は面接やプレゼンテーションで、自分の長所や個性を伝える力が求められる。

 従来の生徒会活動や部活動に加え、習い事や資格取得など校外活動も評価対象となるため、受験生にとって門戸が広がる。高校側も、多様で、モチベーションが高い生徒を受け入れることによって、学校の活性化が期待できるという。

 自己推薦の導入は全国的に進んでおり、沖縄や島根、岩手も今春から実施している。高校教育に詳しい上智大の相澤真一教授(教育社会学)は「自己推薦を導入した多くの自治体で出願者が増え、倍率が上がっている」と説明する。

 一方で、すべての高校が自己推薦の恩恵を受けたわけではない。全日制で出願がなかった高校は5校、学科は37に上る。生徒を確保するには、受験制度改革だけでなく、魅力ある県立高校づくりにも知恵を絞る必要がある。

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