2021/06/26 14:30

ローカル線の今 無人化1年 「喜び入る駅」消えた活気 遠隔システム導入で業務効率化はできたけど… 利便性低下に不満の声

カーテンが閉まった窓口前で列車を待つ中学生=鹿児島市喜入町のJR喜入駅
カーテンが閉まった窓口前で列車を待つ中学生=鹿児島市喜入町のJR喜入駅
 JR九州が昨年5月末、指宿枕崎線の鹿児島市内8駅の窓口を無人化してから1年がたった。郡元-喜入間全11駅に遠隔システム「スマートサポートステーション」を導入し、乗客の案内や安全監視をする業務効率化の一環だった。駅員の姿が消えた喜入駅を訪ねると、利便性低下や管理のあり方に、利用者や地元住民から不満や不安の声が聞かれた。

 「こんにちは」。下校時間、元気なあいさつとともに、喜入中学校の生徒が駅前に集まってきた。JRで通学するのは約70人。列車が来るまでの間、客待ちのタクシー運転手に時間を尋ねる姿があった。無人化に伴い、駅舎から時計も外されたからだ。

 定期券の購入もできなくなった。列車から降りてきた男子高校生は「指宿駅か谷山駅まで行かなければならない」と不満げだ。

 喜入駅は市喜入地区の玄関口。「活気が失われてしまった」と話すのは、自営業の樋髙悦子さん(64)=喜入中名町。「喜び入る駅」の縁起を担ぐフレーズの下、駅員が入場券に合格祈願スタンプを押すサービスが人気で、駅を核に町おこしに取り組んできた。

 今は、カーテンで閉ざされた窓口の前に置かれたスタンプを、訪れた人が自分で押す。花壇の荒れやゴミの散乱も目立ち、樋髙さんは「とてもじゃないが『喜び入る駅』ではない」と嘆く。

 現在、駅そばでは、J3鹿児島ユナイテッドFCの練習拠点建設が進む。特急「指宿のたまて箱」から知覧行きのバスに乗り換える乗客もいる。

 「練習場やバス停を気軽に聞ける人がいなければ、初めて訪れる人は困惑するのでは」。かごしま市商工会喜入支部で長年地域振興に携わってきた渕田攻さん(78)は、観光客などへの対応を懸念する。

【スマートサポートステーション】
 各駅のホームや改札口に監視カメラ、券売機にインターホンを設置し、拠点駅からオペレーターが遠隔で安全確認や案内を行うシステム。県内では初めて指宿枕崎線郡元-喜入間で導入され、拠点は谷山駅構内に置かれている。JR九州で4例目。

■車いす支援は477件

 無人化されたJR指宿枕崎線8駅のうち、近くに大学や住宅街があり利用者の多い谷山、慈眼寺、坂之上の3駅は、JR九州が朝夕の混雑時間帯に係員を配置して窓口対応を行っている。

 一部生徒が慈眼寺駅を利用する鹿児島盲学校(鹿児島市西谷山1丁目)は「登下校時は混雑するため、駅構内の移動を見守ってもらっている」とする。

 車いす利用者は、事前に予約すれば郡元-喜入の各駅で乗降支援を受けられる。同社鹿児島支社によると、この1年の実績は477件(5月26日時点)。事前予約や乗降時の対応に「問題は出ていない」としている。

 遠隔システムの運用について「見えてきた課題は、その都度対応している」と説明。これまで係員を呼び出すインターホンの位置が分かりにくいなどの指摘が利用者からあり、案内表示の改善を進めてきたという。
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