横断歩道はどこへ? 意外と多い「消えた白線」 調べてみると鹿児島ならではの事情が

2022/02/16 11:08
白線がほとんど消えている横断歩道=鹿児島市与次郎1丁目
白線がほとんど消えている横断歩道=鹿児島市与次郎1丁目
 横断歩道やセンターラインなどの白線が見えない道路が目立つ-。こんな声が「こちら373」に相次いだ。取材すると、鹿児島特有の事情が見えてきた。子どもや高齢者といった交通弱者はもちろん、視覚障害者など命にかかわる危険性もある。整備拡充を望む声は強い。

 県外から鹿児島市に転居した60代女性は「歩行者が車道を歩いてくるので驚いてよく見ると、横断歩道が消えていた。特に夜間が怖い」という。

 自宅や会社周辺を歩いてみた。すぐに消えかけた横断歩道を見つけた。意識していなければ気づかないが、意外と多いことに驚く。道路の白線は横断歩道や停止線などの「道路標示」と、中央線や車道境界線などを示す「区画線」の2種類がある。「道路標示」は県公安委員会、「区画線」は国、県、市などの道路管理者が管理する。

 白線の経年劣化は交通量や車両の走り方に左右され、予測が難しい。さらに鹿児島独特の事情がある。桜島の火山灰だ。灰による摩耗で他県に比べ劣化が早いという。

 もう一つの特殊事情は道路の長さ。国と県が管理する県内の道路延長は約4900キロと九州一長い。限られた予算の中ではなかなか整備が追いつかない。

 県警交通規制課によると、県内の横断歩道は約1万5000カ所。2020年度の予算は約1億3000万円で、約860カ所(約36キロ)を補修した。国道の一部と県道を管理する県道路維持課は緊急性の高い部分から手掛け、20年度は約450キロ分を補修した。

 ただ、厳しい財政事情から予算は限られ、21年度の県の道路事業費は約454億円と、1999年度の約5割に削減された。区画線の引き直し費用はこのうち交通安全施設事業費7億7000万円から捻出している。

 県警、県とも点検パトロールなどをして優先箇所を決めているが、住民の意見は重要な判断材料の一つ。県警交通規制課の南英雄理事官は「すべてに即応するのは難しいが、県民の声は重視している」と話す。

 目が不自由な人にとっても、横断歩道の白線は大切だ。信号は見えにくいことがあり、横断歩道を頼りにする人は多い。「健常者にかすかにしか見えない白線は、視覚障害者にはもっと見えない」と県視覚障害者団体連合会の田中勉会長。白線が消えていると横断歩道から外れて歩き事故に遭う危険性が高い。協会には「道路の白線が消えて不安だ」など会員の声が多く届いている。

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