校舎の擁壁に貼り巡らせた養生テープ=鹿児島市の錦江湾高校
不快害虫ヤンバルトサカヤスデの効果的な防除策を、鹿児島市の錦江湾高校理数科3年の研究班8人が考案した。建築用の養生テープ(マスキングテープ)を家の外壁に張る方法で、簡単で効果が高く、しかも安価でできる。同校は文科省のスーパーサイエンスハイスクールの指定を受けており、研究は「サイエンスインターハイ@SOJO」(7月・熊本県の崇城大学)準グランプリなど数々の大会で評価を受けた。
考案したのは、建屋壁面の地上約30センチの場所に、幅4センチ以上の養生テープをぐるりと一周巻き付ける方法。テープの表面が滑らかなためヤスデは脚がかからず、上ることができない。これまでも通電性の金属テープやガムテープを使う防除法はあったが、高価だったり、テープをはがした跡が残ったりと問題があり、あまり普及しなかった。
研究班はヤスデの体長や脚の構造から、使うテープの材質や幅を考察。養生テープ5種類の中から1種類を選び、ヤスデが大量発生した際に2度、実証実験を行った。テープを越えて壁を上ったヤスデは50~60匹のうち1度目は0、2度目は1匹で、防除率は100%と98%。また、一般家屋1軒分の費用は約500円と、金属テープの150分の1に抑えられた。
ヤンバルトサカヤスデは農作物や人への被害はないが、群れの見た目や、刺激を与えた際に放つ臭いが不快要因となっている。生態や駆除の調査研究には、県や大学が長年取り組んでいるが、決定的対策はいまだにない。
同校では2012年に大発生し、以降も教室に侵入するなど手を焼いたのが、“厄介物”研究のきっかけになった。研究班を指導する保島美穂教諭(41)は生徒に別テーマの研究を勧めたが「頑として譲らなかった」という。「俺たちがあきらめたら誰がやる、という気持ちだった」と3年の石本優真さん。ヤスデの研究論文は数が少なく、台湾や北欧の英語論文を探し出し、手がかりにしたという。「ヤスデに悩む多くの人に、この方法を活用してほしい」と話している。
■ヤンバルトサカヤスデ
台湾原産のヤスデの一種で多足類。体長2.5~3.5センチで、黄褐色か茶褐色。幼虫期の4~6月と成虫期の10~11月に集団で移動する。国内では1983年に沖縄で生息が確認され、鹿児島県内では25市町村で確認されている。