救助活動を進める消防職員ら=29日午後5時半ごろ、屋久島町の安房港
29日午後、鹿児島県の屋久島沖に墜落したとみられる米軍機オスプレイ。海上で発見された男性は死亡した。搭乗員と確認されれば、防衛省は「国内初の死亡事故」としている。目撃者によると、機体の残骸が散乱する現場は陸地から1キロも離れていない。これまでも各地の民間空港に緊急着陸する事例が相次いでおり、生活圏に近い重大事故は、オスプレイに不信感を抱く国民の反発を招きかねない。
機体の異変を確認してから十数秒、海面から水柱が上がった-。真っ先に救助に駆け付けたのは、近くで操業していた漁師たちだった。現場に近い安房港に帰港後、南日本新聞の取材に「何が何だか分からないほどの漂流物があった」「こんなにひどい状況とは」と口をそろえた。
付近ではシマアジの一本釣り漁で5隻が操業中。最初に異変に気付いたのは、同じ船に乗る中島正道さん(68)と伊藤佳代さん(46)だった。2人によると、機体が突然くるくると回転しはじめ、エンジンから火が噴き出した。水柱が上がるまで「わずか十数秒、あっという間だった」。すぐに漁を取りやめ、救助に向かった。
「落ちる、落ちる」。中島さんらの叫び声を聞き、他の4隻の乗組員も機体が海面に突入する瞬間を目撃した。漁場から現場まで約3~4キロ。急いで船を走らせると、高さ15メートルほどの煙が立ち込めていた。「機体の原形はとどめておらず、漂流物が散乱していた。油の異臭がすごかった」と30代男性。その後、別の船の漁師が海面にうつぶせに浮いていた搭乗員とみられる1人を見つけ、船に引き上げたという。搭乗員の捜索に加わった20代男性は「漁場から少し離れていたが、こんなことが起こるなんて怖い」とつぶやいた。
午後5時半ごろ、安房港ではブルーシートが張られ、消防職員や海上保安官らが周辺を動き回っていた。救急車が1台待機しており、搭乗員が見つかったとみられる。生死は分かっていない。
日が沈み、真っ暗となった午後8時半すぎも、安房港付近の上空を航空機やヘリが飛び回り、海面をライトで照らしながら残る搭乗員の捜索を続けている。
◇搭乗者数「8人」に再訂正
米軍のCV22輸送機オスプレイが29日に屋久島沖に墜落した事故で、第10管区海上保安本部は30日朝、「6人」としていた搭乗者数を8人に再訂正した。当初は8人と発表し、6人に訂正していた。