『アヲハタ 55ジャム』をはじめとするフルーツ加工品で、食卓に彩りとおいしさを届けてきたアヲハタ。創業以来大切にしている『良い商品は、良い原料から』という想いは、今もなお受け継がれています。単に良質なフルーツを仕入れるだけでなく、おいしいフルーツを育てるための知恵と情熱を、農家の皆さんと分かち合いながら歩みを進めています。今回は、そんな持続可能な原料調達について、3名の担当者にお話を聞きました。アヲハタの情熱が生み出す、人と地球に優しい挑戦をご紹介します。
石橋 弘行
アヲハタ株式会社 執行役員 経営本部長
川﨑 浩平
アヲハタ株式会社 果実原料本部 原料業務部 次長
清水 崇行
アヲハタ株式会社 品質保証本部 原料品質管理部 マネージャー
川﨑「私たちアヲハタにとって、生のフルーツがどれほど重要か。入社以来、20年近く原料に向き合う中で、その想いを強くするようになりました。当たり前ですが、生のフルーツがなければ、私たちは加工をすることができません。さらに、アヲハタが求めているのは“良い原料”。たとえば、イチゴとひと口にいっても、いろいろな品種があり、味もさまざまです。アヲハタの『55ジャム』や『まるごと果実』では、着色料を使わずに、イチゴ本来の赤い色や香りを大切にすることにこだわり続けています。そのため、長年にわたり、私たちは加工に適した品種を自分たちで生み出す、育種・育苗にも取り組んできました」
清水「自分たちで品種をつくる取り組みを始めたのは、15年以上も前。産地の気候の変化によりアヲハタの求める色や香りの良いイチゴが育たなくなってしまったことがきっかけでした。イチゴは主に公的機関が品種開発している特殊な作物です。アヲハタでは公的機関である農研機構(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構)と組んで加工用に適した品種を開発しています。ひとつの品種をつくるのにかかるのは約10年。情熱も根気も必要です。それだけ向き合ってきたからこそ、お客様に変わらぬおいしさをお届けできています。この独自の追求が私たちの強みであり、これからも取り組み続けたいと考えています」
石橋「食品メーカーとして加工用のイチゴの育種・育苗まで行っているのは、大変めずらしく、原料そのものへのこだわりから取り組みが生まれています。世界中のさまざまな産地で適地適作を行い、それぞれの農家さんと深い関係づくりができていること。ここにアヲハタらしさがあると思っています」
川﨑「アヲハタは常に良い原料を求め、安全・安心でフルーツのもつおいしさにこだわった商品づくりに努めてきました。私たちは、良い原料を『高品質で、フルーツの味をそのまま生かせる』ものと定義しています。ただ、社内では『それだけではない、もっと他の価値もある。』という声も上がっています。変えずに守るべきこともあれば、時代に沿って変えるべきこともあると思うのです。さまざまな価値観を大事にしながら、『良い原料とは何か?』を常に考えている集団でありたいと思います」
アヲハタ株式会社 果実原料本部 川﨑 浩平
清水「より良い栽培をしてもらうために、私たちは農家さんと技術交流を行っています。農家さんはフルーツを育てるプロですが、加工については私たちがプロです。加工用の原料に求められる品質について私たちの知見を提供することで、農家さんはより高品質な加工原料の栽培が実現できます。これにより、農家さん自身のブランド力が向上し、他の取引先からも高い評価を得ることにつながります。また、私たちは農家さんと単年でお取引することはありません。信頼関係のもと、長期的にお取引を続けることで、農家さんも経営の見通しが立ちやすくなり、私たちも品質の良いものを安定して調達しやすくなります。長年続けている農家さんとの連携が、今もなお、お互いにとって良い形になっています」
川﨑「イチゴの栽培中に予期せぬ病気などが発生した場合も、アヲハタが世界中の農家さんから集めた知見を基にアドバイスできるようにしています。さらに、アヲハタが独自に開発した、病気にかかりにくい『ウイルスフリー苗』を使っていただくことで、収量が倍になったという嬉しい声もいただくことがあります。イチゴは一度病気にかかると広がりやすい、栽培が難しい作物です。今後は気候変動によって、新たな病害のリスクも高まっていくでしょう。そうした状況でも、ウイルスフリー苗の果たす役割は大きいと考えています」
石橋「私たちのバリューチェーンには、どのような機会とリスクがあるのか。温暖化や水不足、害虫被害など、気候変動がもたらす課題は、今後ますます深刻化していくことが予測されています。その結果、原料調達のリスクは年々高まっています。アヲハタにとって『良い原料』の調達は、他社との差別化を図るための非常に重要なテーマです。 だからこそ、私たちは世界中の農家さんとの協力体制含め持続可能な調達を築いていくことが、これまで以上に必要になっていくものと思います」
アヲハタ株式会社 執行役員 石橋 弘行
川﨑「これから取り組みたいテーマに、天気予報の精度の向上があります。日本国内は天気予報の精度が非常に高い。けれども海外ではそこまで高くなく、予測できる期間も限られてしまっています。私が赴任していたチリでは、現地は見渡す限り一面のイチゴ畑。露地栽培では、天気の影響を直に受けてしまいます。それにも関わらず、天気予報がはずれることが多く、収穫のタイミングを見極めるのが難しいという課題がありました。収穫時期を逃すと、イチゴの香りはみるみる失われ、品質が落ちてしまいます。天気予報の精度が上がれば、収穫の見極めがしやすくなり、農家さんの助けになるはず。アヲハタとしてできることがないか、今まさに検討を進めている段階です」
清水「たとえば雨がたくさん降りそうなら、溝を掘って排水ができるようにする。日照りが続くようなら、日差しを和らげるための幕を引いておく。どんな気象条件になりそうか、あらかじめ予測ができれば、その都度対策ができますよね。おいしいイチゴが育つまでは、日々の地道な積み重ねです。天気予報の精度が上がれば、農家さんもいち早くリカバリーができるようになると思いますね」
アヲハタ株式会社 品質保証本部 清水 崇行
川﨑「原料の進化とともに、商品も進化し続けています。『アヲハタ 55ジャム』では、発売から55周年を記念して、季節に合わせたおいしさを実現しました。春夏は『さわやかブレンド』。秋冬は『濃厚ブレンド』。年間通してイチゴジャムのおいしさを楽しんでいただきたいという想いから生まれた商品です。さらにアヲハタの進化は、ジャムだけにとどまりません。社内の公募のアイデアから生まれた『くちどけフローズン』も、10年かけてラインアップを増やし続けています。好きな時にすぐ食べられる“凍ったままでやわらかい”冷凍フルーツです。もともとは、こういう商品があったら、幅広いお客様にもっと手軽にフルーツを食べてもらえるのでは?という発想から生まれた商品。イチゴからスタートして、今では青りんごや白桃、アプリコットまでバリエーションが広がり、フルーツそのものの味や香りを楽しめると好評をいただいています」
石橋「フルーツをいかにお客様においしく食べていただけるか。“フルーツで世界の人を幸せにする”というのが、私たちアヲハタが掲げるビジョン。私たちの商品が、フルーツを身近に感じていただくきっかけになれたら嬉しいですね」
清水「気候変動に適応しないことには、持続可能な調達は実現しません。可能性がありそうなことはすべて試して、私たちアヲハタだけでなく、社外の皆さんと協力しながら、みんなで解決していかないといけない問題だと考えています。食べた人が幸せになる商品をつくり続けるためには、まず原料を栽培してくださっている農家さんが幸せであること。そうでないと世界の人たちを幸せにはできないと思っています。そうやってアヲハタに関わっていただく農家さん、冷凍一次処理を行うサプライヤーさんとみんなで手を取り合って、いかに持続可能な関係を続けていけるか、ということだと思います」
川﨑「今まさに我々が議論しているのは、新しい次元で、より深い対話を農家さんやサプライチェーンの皆さんとしていこうというものです。国や地域によって抱えている課題はさまざま。だからこそ、一斉に同じことをやるのではなく、各地の取り組みをしっかり理解した上で、それぞれに適した対策をしていかないといけないと思っています。加えて、農家さんが大切に育ててくれたフルーツを100%価値あるものにし、多角的な視点で自然のめぐみを生かしきることが究極のめざすところです。加工のプロとして、従来の価値観にとらわれない発想で、お客様に新たな価値を届けていきたいです」
石橋「急激に気候変動が進み、地球の限界値を超えています。待ったなしの状況下にいるという危機意識を持って、原料調達に取り組んでいます。商品ができるまでの私たちの取り組みや私たちが思い描くストーリーをもっともっと広くお伝えし、この取り組みに共感してくださる方々とともに、持続可能な未来に向けた取り組みの輪を広げていきたいと思います」
2025年9月公開
※内容、所属、役職等は公開時のものです