滋賀県甲賀(こうか)市を拠点に、ネイルサロン、エステティックサロン、カフェの事業を展開するISY(アイ・エス・ワイ)合同会社。2025年7月6日には、忍者をテーマにしたバー「忍びBAR 朧(しのびバー おぼろ)」をオープンしました。
代表の内田真理さんは、この地で中学生時代を過ごし、卒業を前に上京、アイドル歌手「YURIMARI」として活動した後、起業家に。アメリカ・ロサンゼルスで身につけたネイル技術を生かし、甲賀市でネイルサロンを開業、「ネイルは人生を豊かにする」をテーマに、その魅力を発信しています。
一方、コロナ禍を経て、サロンのドリンクサービスを安全に行えるようテイクアウトのカフェを開設、後に夜パフェが話題になり、行列ができるほど大盛況に。今夏には、そのパフェも楽しめるバーを開業。「甲賀のまちを盛り上げたい」という熱い想いを胸に、多彩な事業を展開しています。
ネイリストとして、技術者の育成と、その地位と価値の確立に力を注ぐ一方で、起業家として地域の活性化に尽力する代表の内田さん。結婚、出産を経て3人の子どもを育てながら奮闘してきた道のりと、未来に描くビジョンをお聞きしました。
●甲賀市内でネイルサロン3店舗、エステティックサロン、カフェ、バーを経営。事業を通じて滋賀・甲賀の魅力を発信
・・・はじめに、会社の事業内容について教えてください。
2010年に1店舗目のネイルサロンを現在の場所・水口でスタートし、現在はここを含めて甲賀市内に3店舗を展開しています。本社でもある水口店では、エステティックサロンも併設し、リンパマッサージなどの施術を提供しています。
また、同じ敷地内に2022年に立ち上げたコンテナハウスのカフェがあります。コロナ禍でネイルサロンのドリンクサービスを休止したため、美容に特化したドリンクをテイクアウトで提供できるようお店を作りました。その後、土曜日の夜だけパフェを販売したところ、夜パフェのブームも重なって行列ができるほど話題になり、ハロウィンのイベントも好評で3年間続けました。現在はサロン利用者様専用の美容カフェとして不定期で営業しています。この経験を生かし、2025年7月には、忍者をテーマにした「忍びバー 朧(しのびばー おぼろ)」をオープンしました。
・・・「忍びバー 朧」は、どのようなお店ですか?
立ち上げる時に意識したのは、やはり甲賀に来ていただくのであれば、忍者の雰囲気を楽しんでいただきたいということです。店名は、「朧月夜に隠れて遊びに出よう」というイメージ。店内は赤を基調とした和のテイストで、壁面には、石垣をよじのぼる忍者のイラストをペイントしたり、「忍」の掛け軸、手裏剣型のコースターなど、細部に遊び心を取り入れています。バーでありながら、パフェや和洋食などフードメニューが充実しているのも特長で、アミューズメントの要素を取り入れた、男女年齢を問わず気軽に楽しんでいただける空間づくりを大切にしています。
●地元の人はもちろん、観光で訪れる人が楽しめる場所をつくりたい。想定外だった飲食業への挑戦
・・・なぜバーをオープンすることになったのですか?
実はまったく想定外の事業だったのですが、ずっと通っていた居酒屋さんが閉店すると聞いたのがきっかけです。このあたりは水口城の城下町で、東海道の宿場町でもあり、雰囲気のある街並みが残る地域で、近年ではインバウンドによる外国人の観光客も増えています。その一方で宿泊施設や飲食店が少なく、滞在してゆっくり散策を楽しめるような環境が整っていません。誰かお店を引き継いでくれる人はいないかと、知り合いに声をかけていたのですが、お客様から「やってみたら」という声が届くようになって。それで物件を見ると場所も会社から近く、食事後に2軒目として使えて、夜パフェが食べられる女性が行きやすいバーをつくるのも“あり”なんじゃないかと思ったんです。
同時期にネイルサロンの店舗移転が重なり、余裕もなく急展開だったのですが、やると決めたら素早く動くのがモットーなので、オープン前の6月にクラウドファンディングに初挑戦し、スタッフを探し、苦労もありつつ準備期間1カ月半でオープンすることができました。
・・・オープン後の状況はいかがですか?
まだまだ準備不足のところはありますが、横のつながりで地元の飲食店のオーナーの方々が毎日のように来店してくださり、叱咤激励と応援をいただきながら成長しているところです。立地がよいとはいえないのですが、地元の方はもちろん、大阪や他府県からもパフェを目的に来て下さる方もいて、おかげさまで平日でも22時をピークに満席になる日々が続いています。
ネイルのお客様、バーのお客様、それぞれ対象は異なりますが、双方にご紹介ができるメリットもあり、結果として良かったかなと思っています。
●このままでは将来が見通せない。アイドル、タレント活動を経て渡米、偶然の出会いに導かれネイリストの道へ
・・・アイドル歌手から起業家へ、そのご経歴を聞かせてください。
出身は大阪府高槻市ですが、中学生の時に現在の滋賀県甲賀市に移り住み、中学の3年間を過ごしました。3年生の終わり頃にはデビューが決まっていたので、卒業を待たずに上京し、以降、「YURIMARI」として歌手活動をし、20歳まで東京にいました。解散・引退後は関西に戻り、タレント活動をしていたのですが、学歴もなく、手に職もなく、このままどこまでやれるのだろうと、将来のことを漠然と考えるようになりました。
そこで、ずっと興味のあった海外へ語学留学に行くことを決め、4カ月間ロサンゼルスに滞在しました。ネイルに出会ったのはこの時です。実は何かの手違いで語学学校の入学手続きができておらず、予定が白紙になってしまったんです。現地では友人と住まいをシェアしていたのですが、その友人がネイルスクールを卒業し、学校に忘れものを取りに行くというので一緒についていきました。そこで出会った日本人の校長先生に事情を話すと、「うちで単位を取らない?」と。働きながら技術が身につき、お客様が外国人なので英語も覚えられるという環境だったので、学ぶことにしました。ネイルにまったく興味はなかったのですが、始めてみるとすぐに夢中になりました。
・・・そこから起業、会社設立へとつながっていくのですね。
ネイルサロンを開業したのは2010年、28歳の時ですが、それまで3年間ほどネイルから離れていた時期がありました。というのも、帰国後は滋賀県に帰り、美容室のネイルサロンに4年間勤務、その間に結婚、出産、働きながら子育てをしていたのですが、離婚を機に日中は別の仕事をかけもちする過酷な状況になってしまって。それでも月に2・3回は友人にネイルの施術を続けていたのですが、やはり技術の質は落ちてしまいます。もうネイルの仕事には戻れないと感じながらも、口コミで来てくださるお客様が増えていったことで、もう一度ネイルを仕事にしたいという想いが強くなっていました。
そんな中、現在の夫と出会って再婚し、双子を出産、子どもが2歳の時に自宅を建てることになりました。これを機に、ネイルサロンを併設することを決め、ISYネイルサロンとして開業しました。この時は店舗を増やすことや会社を興すことはまったく考えていなかったのですが、ネイル業界は他の美容産業に比べると離職率、廃業率が高く、優秀なネイリストでもネイル一本で続けていくことは難しい世界なんです。私自身は運に恵まれ、続けてこられましたが、後に続く若いネイリストが安心して働ける場所をつくるために、2024年にISY合同会社を設立しました。
●ネイルでお客様の心をハッピーに。そして事業で町おこしに貢献できるよう活動を続けたい
・・・今後の取り組みについて、未来のビジョンをお聞かせください。
起業から15年、「ネイルは人生を豊かにする」をテーマに、現役のネイリストとして事業を続けてきました。指先の小さな変化でも、お客様は笑顔になり、心は豊かに、ハッピーになります。その魅力を伝えたくて、美容と健康をテーマにマルシェを開催したり、子どもたちのお仕事体験など、地域密着の活動にも力を入れています。今後は、地域貢献という意味では、高齢者施設や災害後のケアとしてボランティアで施術を提供すること、人生の最後にエンディングネイルを施すサービスなどができればと考えています。
また、町おこしの活動としては、例えば、「忍びバー 朧」で週末だけランチ営業を行い、家族連れや観光客の方々に利用してもらえるようにすること、さらに大きな夢として、一棟貸しのサウナ施設を作り、ご飯は朧で、美容はサロンでリラクゼーションを堪能し、都会から遊びに来て、一日ゆっくり甲賀で過ごし、癒されて帰ってもらえるような場所を作りたいと思っています。
プライベートでは、古神道(こしんとう)の勉強をしているのですが、もともと家系として叔母が占い師をしていたり、私自身も普段の生活では閉じていることが多いのですが、人の「気」が見えるということもあり、この授かった力を生かし、時間があれば日本中の神社を巡って学び、学んだことを人のしあわせのために役立て、恩返しをすることが使命だと思っています。そう考えると、人に触れる美容の仕事は天職だと感じています。
私は本当に運が良くて(笑)。ネイルに出会ったのも偶然、アイドルになったのも偶然で、先に上京していた親友の事務所社長が私の写真を見て、電話一本で上京が決まり、その親友と一緒にデビューといういきさつで。想定外のことが目の前で起こっても、「行ってみよう、やってみよう、まあできるでしょう私なら」(笑)と。ご縁があって私のもとに来た事柄は、「試されごと」だと思ってありがたく受ける。そうして生きてきたので、これからも流れに抗うことなく歩んでいきたいと思います。
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■ISY(アイ・エス・ワイ)合同会社
代 表:内田 真理
所在地:滋賀県甲賀市水口町京町5-5
TEL :090-7762-0108 (office)
URL :https://isy-co.com/
■忍びBAR 朧(しのびバー おぼろ)
住 所:滋賀県甲賀市水口町京町3430
営業時間:18:00~25:00
TEL :070-9003-0846
定休日 :不定休
■ISYネイルサロン:水口店・2nd店・甲賀店 ※完全予約制
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