スプリングマットレスは、実は“捨てにくい”。
その社会課題に、20年以上前から向き合ってきた企業があります。
フランスベッドは、まだSDGsという言葉がなかった時代から、「捨てるときのことまで考えたものづくり」に取り組んできました。
今回は、フランスベッドが歩んできた“静かな革命”の物語をお届けします。
リサイクルセンターに設置されたマットレス解体機
1999年、フランスベッドは静岡工場にスプリングマットレスの解体マシーンを準備しました。
当時、スプリング入りマットレスは「適正処理困難物」とされ、廃棄が難しい製品のひとつ。
私たちは、製品の“終わり”まで責任を持つべきだと考え、自社で解体できる仕組みを整えようとしていました。
しかし、法改定によりマシーンは稼働せず。
それでも、環境へのまなざしは社内に根付き、次なる挑戦へとつながっていきました。
2010年、家庭用マットレス「リコプラス」が誕生。
カッターナイフ1本で分解・分別できる構造を持ち、すべての素材がリサイクル可能。
業界で初めてエコマークを取得した家庭用マットレスとして、
「この星のことを考えて生まれたマットレス」というキャッチコピーを掲げました。
SDGsという言葉がない時代に、
私たちはすでに、未来の地球を想う設計思想を形にしていたのです。
スプリングマットレスは、長年「捨てにくいもの」とされてきました。
その課題に真正面から向き合い、フランスベッドが独自に開発したのが、環境配慮型マットレス解体システム「MORELIY®(モアリー)」です。
2022年から展開を開始したこの構造は、スプリング・ウレタン・布地などの素材が干渉しない設計で、工具不要・一人でも簡単に解体・分別が可能。
廃棄時の作業負担やコストを軽減し、不法投棄や埋め立て依存の抑制、リサイクル促進にもつながる、まさに“循環型経済”への実践的な一歩です。
生活者が「環境にやさしい選択」を自らの手で行えるようになることで、
マットレスは単なる寝具から、環境行動のきっかけとなる存在へと進化しました。
2024年度には「MORELIY®」仕様マットレスの販売数が前年比約2倍に伸長。
マットレス販売全体の約1/4を占めるまでに成長し、2032年までに製造マットレスの5割への採用を目指しています。
「捨てるときのことまで考えたマットレス」は、今や新しい暮らしのスタンダード。
フランスベッドは、“最後まで責任あるモノ選び”を、眠りの世界から提案し続けています。
ホテル向けマットレスでは、業界初のエコマークを取得。
アメニティ消費量の削減など、環境配慮施策を進めるホテル業界に貢献しています。
フランスベッドが2020年に実施した調査では、スプリング入りマットレスの処理に課題を抱える自治体が約4割にのぼることが判明。
具体的には、26%の自治体が「個人での解体・持ち込み」を条件としており、18%の自治体では「収集・処理不可」とされていました。
この結果は、生活者が「買うとき」だけでなく、「捨てるとき」まで考えなければならない時代へと変化していることを示しています。
2023年には、フラッグシップモデル「THE FRANCEBED」がサステナブル仕様にリニューアル。
海洋プラスチック由来の再生素材や、焼却しても有害物質を出さない天然素材を採用。
高級感と環境配慮を両立したマットレスとして、エシカル消費を促進しています。
この海洋プラスチックの一部は、途上国の貧困層によって収集されたもの。
たとえば、インドやフィリピンなどでは、海岸や街中に散乱するプラスチックごみを回収することで、生活の糧を得ている人々がいます。こうした活動は、フェアトレードの仕組みを通じて賃金が支払われることで、環境問題と貧困問題の両方にアプローチする取り組みとして注目されています。
フランスベッドが採用する素材は、単に環境にやさしいだけでなく、社会的な課題解決にもつながる選択。
「眠りの質」だけでなく、「暮らしの質」まで考えたマットレスづくりを、これからも続けていきます。
フランスベッドのSDGsは、単なる取り組みではありません。
それは、ものづくりの哲学であり、未来への責任です。
ベッドフレームにはCO₂削減技術「PALM LOOP™」を、福祉用具には循環型レンタルサービスを。
私たちは、眠りの周辺すべてにやさしさを広げています。